The Beach Boys/Endless Harmony Soundtrack
(TOCP-50720)


   【途中挫折必至の全曲解説

共著・浜尾 六郎/古殿 竜夫(第5期BB5エキスパート)

1. Soulful Old Man Sunshine
  (writing session excerpt)
2. Soulful Old Man Sunshine
3. Radio Concert Promo 1
4. Medley: Surfin' Safari/
   Fun Fun Fun/
   Shut Down/
   Little Deuce Coupe/
   Surfin' USA
   (live 1966)
5. Surfer Girl
   (binaural mix)
6. Help Me Rhonda
   (alternate single version)
7. Kiss Me Baby
   (stereo remix)
8. California Girls
   (stereo remix)
9. Good Vibrations
   (live)
10. Heroes & Villains
   (demo)
11. Heroes & Villains
   (live 1972)
12. God Only Knows
   (live)
13. Radio Concert Promo 2
14. Darlin'
   (live 1980)
15. Wonderful/Don't Worry Bill
   (live 1972)
16. Do It Again
   (early version)
17. Break Away
   (demo)
18. Sail Plane Song
19. Loop De Loop
20. Barbara
21. 'Til I Die
   (alternate mix)
22. Long Promised Road
  (live 1972)
23. All Alone
24. Brian's Back
25. Endless Harmony

 

24. Brian's Back
賛否分かれる有名未発表曲。
マイク・ラヴが自身のソロアルバム「ファースト・ラヴ」のために'78年に作った曲。だが結局このアルバムはお蔵入り。

ブライアンの精神状態が快方に向かいつつあったのをいいことに、無理矢理スタジオに引っぱり出して制作した'76年「15 Big Ones」時に打ち出された「ブライアンズ・バック」キャンペーンがこの曲の発想の源になっている。

基本的にマイクには懐疑的な姿勢の私には「みんなは『ブライアンが戻ってきた』と云うけれど、彼がいなくなってたなんて知らなかったよ」てな歌詞は「おいおい待てよ」という感じであった。才能の最高潮時のブライアンに寄ってたかって理解を示さず、「こんなもん誰に聴かすんだ?犬か?」と後に「Pet Sounds」として世に出される楽曲群をけなし(実は云っていないという説もあるが)、ヴァンダイク・パークスとの共作曲に「何なんだこの歌詞は。説明してみろ!」と食ってかかったのは一体誰なんだ!ブライアンを遠くに行かせてしまった責任がお前に全くないと言い切れるのか!

さらに甘ったるい声で「"Good Vibrations"は強烈だった」「"Pet Sounds"は云うまでもない」とこれでもかこれでもかとブライアンを褒めちぎる。
ちょっといい加減にしろよ。

私はひょっとして一般的に知らされるBB5ストーリーにダマされてマイクのことを誤解してしまっているのかもしれない。ブライアンのドキュメンタリー映画「I Just Wasn't Made For These Time」でも過去そんなことがあったとされているのにも関わらず、ブライアンはマイクを重要なパートナーであると語っている。この辺のことはブライアンのわからない部分のひとつである。身内バンド故の特殊な感情なのかもしれないな。

ついでにもうひとつマイクを擁護してみると、ブライアンが引き籠もりレコードセールス的にはドン底だったBB5がライブ活動に活路を見出し、評価を高めつつあった時期、ブライアン抜きで堂々とフロントマンをつとめた功績は大きいだろう。「曲も書けない単なる目立ちたがり屋」というヤジを飛ばしたくなる気持ちもないわけではないが、エンターテイナーたりうるのもひとつの才能ということにここではしておこう。

まぁとにかく。
英語聴解力をゼロにして聴けば実に良い曲。ゲスト参加のカールのコーラスも 実に良い。エンディングの「You Still Believe In Me」のメロに思わずニヤリ。

まぁとにかく。
なんだかんだで楽しんでいる曲である。(98.11.12)



76年のアルバム「15 Big Ones」で半分ジャンキーから抜けきってはいないものの、ブライアンが復帰しました。その時マイクがレコード会社を巻き込んで「Brian's Back」という一大キャンペーンを画策し、セールスに利用しようとしました。悪い言い方をしちゃうと商売人仕事ですが、その甲斐あってかシングル「Rock 'n' Roll Music」は全米トップ10に入る久々のヒットとなりました。そのキャンペーンに合わせてマイクが書いたのがこの曲ですが、結局は発表されずに終わります。

前述のような背景があるためファンにとってはちょっと卑しいイメージもあり、今まで何となく冷ややかに語られることも多かったと思いますが、その後レコーディングされていたんですね。本テイクは78年にマイクのソロ・アルバム用に制作されたものであるらしい(これも結局はお蔵入り)。

僕自身、著書「リアルストーリー」や「ブライアン・ウィルソン自叙伝」を読んで「マイク・ラブは何だかイヤな奴」という印象を持っていたこともあり、あまり期待はしてなかったのですが、聴いてみて意外にも(失礼)内容が良いことにびっくり。

作詞家としてのマイクは過去のブライアンとの共作で評価が高いのですが、ここではメロディメイカーとしてもかなり健闘しています。郷愁をそそる曲調やよくまとまったアレンジ、コーラスなど、水準以上の出来です。ゲストにカールが参加しており、マイクと交互にヴォーカルを取る様は後年(何て悲しい響きなんだ)のビーチ・ボーイズを彷彿とさせます。また時々コーラスに往年の曲のフレーズがオマージュ風に顔を出して泣かせます(コーダ部分の「You Stil Believe In Me」のスキャットには不覚にもグッときてしまいました)。

これらがあざとい商売人根性からくる演出だと言ってしまえばそれまでですが、ここはひとつマイクのクリエイターとしての才能と、この曲の良さを素直に認めようじゃありませんか! (古殿竜夫/98.11.13)



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