23.All Alone
この曲は本アルバムでの、実は目玉の一つではないでしょうか？だって数少ないあのデニスの作品をこんな形で聴けるんですから。唯一のソロアルバム「Pacific Ocean Blue」を愛聴盤とする僕にとっては、今回本当に楽しみな曲の一つでありました。セカンド・ソロアルバム「バンブー」の為の曲で、78年の録音とのことです。

曲自体はツアーメンバーだったカルロス・ムノスという人の作品ですが、これがデニス自身の作かと思わせるような、本人にぴったりの作風にまずびっくり。最初から彼を意識して作られたのでしょう。

デニスにはスロー・バラードを静かに歌う側面と、心の叫びとも言うべき内面を激しく歌う側面があったように思いますが、この曲では後者の特性がよく表れています。性格的にもその奔放な行動ぶりからも、メンバーや家族、兄弟ともなかなか心を通わすことができなかったデニス。その分音楽を通じて語りかけてくるような説得力があります。しっかりしたバックに支えられ、彼の歌唱が実によくハマっています。それまでの彼からすると、ちょっと重苦しい感じはするけども。

この後デニスは酒とドラッグに溺れ、才能を充分発揮できずに他界してしまいます。「Pacific Ocean Blue」でもここまで重い曲はなかっただけに、幻に終わってしまった「バンブー」が完成していたらどうなっていたんだろうと、あれこれ考えてしまいます。それから他にもこういう録音が残っているなら、ぜひ聴きたいですね。

(古殿竜夫／98.11.24)