The Beach Boys/Endless Harmony Soundtrack
(TOCP-50720)


   【途中挫折必至の全曲解説

共著・浜尾 六郎/古殿 竜夫(第5期BB5エキスパート)

1. Soulful Old Man Sunshine
  (writing session excerpt)
2. Soulful Old Man Sunshine
3. Radio Concert Promo 1
4. Medley: Surfin' Safari/
   Fun Fun Fun/
   Shut Down/
   Little Deuce Coupe/
   Surfin' USA
   (live 1966)
5. Surfer Girl
   (binaural mix)
6. Help Me Rhonda
   (alternate single version)
7. Kiss Me Baby
   (stereo remix)
8. California Girls
   (stereo remix)
9. Good Vibrations
   (live)
10. Heroes & Villains
   (demo)
11. Heroes & Villains
   (live 1972)
12. God Only Knows
   (live)
13. Radio Concert Promo 2
14. Darlin'
   (live 1980)
15. Wonderful/Don't Worry Bill
   (live 1972)
16. Do It Again
   (early version)
17. Break Away
   (demo)
18. Sail Plane Song
19. Loop De Loop
20. Barbara
21. 'Til I Die
   (alternate mix)
22. Long Promised Road
  (live 1972)
23. All Alone
24. Brian's Back
25. Endless Harmony

 

17.Break Away(demo)
69年に発表されたオリジナル版(シングルのみで発売)は、主にカールとアランがリードを取っており、仮歌とはいえ全編ブライアンが歌っているこのテイクは貴重です。

オリジナル版では複雑なコーラス・アレンジが前面に出ているために、バックがあまり目立たなかったのが、今回モノラルですがクリアに聞こえます。ブラスが華やかにして優しい響きで、ブライアンのダブル・トラック部分のヴォーカルにもシビレます。またこの状態からブライアンがスタジオにメンバーを集めて、現場処理であのコーラスワークを組み立てていったというすごい事実も浮かび上がります。これらサウンド・プロダクションは今でこそ素晴しいと思えど、当時はずいぶん時代遅れなものと受け取られていたことでしょう。しかし時代が変われど決して精彩を失わない良い楽曲です。

ブライアンと共作者でクレジットされているのはレジー・ダンバーという人。これが実は父親マーリー・ウィルソンの変名なんですが、この頃親子の確執も少し和らいできてたみたいです。曲の出来からすれば、結果的にはこの親子最後にして最高のコラボレーションでしたね。

アルバムでいうと「20/20」の頃です。この時期のビーチ・ボーイズは「Smile」で一気にアンダーグラウンドな世界へ突入したものが結局挫折、1つの大変な時代をくぐり抜けてきた後の落ち着きとか、いい意味で力が抜けてきたというか、喧騒から一歩退いてふっきれたような明るさの曲が多いです。それは次の名作「Sunflower」に受け継がれていきます。

ところで60年代後半といえばサイケだヒッピーだフラワーだと、いわゆるカウンター・カルチャーの時代(その中からデニスとあのチャーリー・マンソンの交流も生まれた)。音楽もサブ・カルチャー的な意味合いが強くなり、それを象徴するイベント、モンタレー・ポップ・フェスティバルが開かれました。ビーチ・ボーイズにも出演依頼が来ましたが、精神的に最悪な状態だったブライアンはこれを拒否。世間からは「ビーチ・ボーイズはおじけづいた」とされ、グループの低迷に拍車をかけることになりました。また当時時代の寵児だったジミ・ヘンドリクスはそのステージ上で「サーフ・ミュージックは終わったのさ」と言い放ち、ビーチ・ボーイズの歴史の中でその良さが最も理解されにくかった時代であったと言えましょう。 (古殿竜夫/98.11.13.)



'69年発表のシングルにして、唯一の因縁の父マリー・ウィルソンとの親子共作曲。今回はそのデモバージョン。

バックの演奏はオフィシャルと大差なく、ボーカルは全てブライアン。彼はしばしばこのようなほぼ完璧なデモを制作し、メンバーにどのように唄うべきか示したという。

長年のギスギスした親子関係が和解へ向かった証の1曲なのかと初めてこの曲と出会った時、勝手にそう理解していたが、決してそんなことはなかった。

チャールズ・マンソンとデニスの関係、キャピトルとのいがみ合いによる印税ストップなど問題山積み状態の中、コカインに溺れていたブライアンに父マリーが「スランプから脱出するためにオレと組め」と近寄り、説得させられてしまったというのが真相のようだ。

色んな文献を読む限り、ホントこの父親は最悪。
もともと音楽業界にいたものの、作曲家として大きな成功を収めることが出来なかったもんだから息子に嫉妬しているんだろうけど、毎回ここぞという最悪のタイミングで登場してブライアンを困らせる。

ブルース・ジョンストンはこの曲を「マリーが無理矢理作らせた曲で全然BB5らしくない」と酷評しているが、でもでもでもでも、軽快なサウンドと'67年「Wild Honey」以降定番のブラスが心地よかったりする。
評価複雑の1曲。
(98.12.12.)



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