20.Barbara
デニスの特徴がよく表れている曲。後年の太くしわがれた声ではなく、それ以前のまだ若いデニスの声を聴くことができます。タイトルの「バーバラ」はデニスの2番目の妻の名前。

71年の録音ということですが、この頃にデニスの持ち味であるスロー・バラード路線が確立されていたのは興味深い。曲としては、ピアノの弾き語りから発展させたような短いメロディで構成されています。それにギターなどを加えて、完成作品前の萌芽というか、原形を聴くことができます。録音状態、アレンジ、ミックスの状態からいって、殆どデモ同然です。とはいえ後半のピアノ中心のインストとデニスのスキャット風なヴォーカルのフェイクは、ラフなアレンジながらも素晴らしく、この完成形が聴けたらなあと思うとため息出ます。

70年代以降、デニスの生活は荒れる一方で、彼はその無軌道な行動ぶりを問題視され、たびたびビーチ・ボーイズを追い出されています。そのため、その内容の素晴らしさにもかかわらず、彼の作品はグループ内でも無視されるようになりました。このことは兄譲りの優れた才能を正にこれから開花せんとする彼にとっても、またグループにとっても不幸なことでした。そんな環境が華やかなロックスターと、その反面ひどく孤独を感じさせるデニスを、あの独特な作風に駆り立てたのでしょうか？

(古殿竜夫／98.11.24)