The World of TONSEi RECORDS−ブラン公式サイト−


■第12回
アダチ龍光さんのこと
落とし前編

(2003.8.30)
■第11回
アダチ龍光さんのこと3
(2002.6.30)
■第10回
N○K受信料私見
(2002.5.22)
■第9回
アダチ龍光さんのこと2
(2002.5.20)
■第8回
アダチ龍光さんのこと1
(2002.5.20.)
■第7回
オレハタイニホネヲウズム
(2000.1.5.)

■第6回
ブート道〜全部ZEPのせい〜
(99.5.7.)
■第5回
ブート道〜序章〜
(99.4.19.)
■第4回
顔文字論
(99.1.11.)
■第3回
屁音楽
(98.11.6.)
■第2回
自分コレクター
(98.9.15.)
■第1回
珍説万歳
(98.9.3.)

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第6回 ブート道(第2回)
〜全部ZEPのせい〜


始めはそう、ZEPからだった。
あれは10代半ばだからもう既に10年以上の時が過ぎていることになる。もうまるでとりつかれたがごとくZEPばかり聴いていた時期があった。ホントもう朝から晩までという表現が大げさでない位、いや学校があるから大げさだ・・・朝、夕方から晩まで部屋で鳴るのはZEPの音という状態が続いていた。
全てのアルバムを隅から隅まで聴き、文献を読みあさり、英語の授業でZというスペルが出てくるだけでドキドキしたりしてた位だった。
今にして思うと私の音楽リスナーとしての純粋度はこの時期が最高潮であったのかもしれない。

んなわけでZEPの音のアイテムは揃え、知識も詰め込んだ。
しかしどうしても満足できないのだ。・・・もっと、もっとZEPが知りたい。

どうも各種文献によるとZEPの本領はライブにあるらしい。
今でこそスタジオ盤とライブ、それぞれの魅力を理解し、甲乙など付けられないことはわかっているが、当時はそんなこと云ってられなかった。ZEPの新しい世界が開けるかもしれないことに胸を躍らせたものだ。

当時オフィシャルで聴けたライブ音源は'73年マジソンスクエアガーデン公演を納めた「Song Remains the Same」、邦題「狂熱のライブ」のみで、これをして「このアルバムはZEPのライブの魅力をほんの一部分しか伝えてはくれない」との記述を目にしたりもした。
・・・一体・・・一体どんな世界が私を待っているのだ!!

ZEPのライブ音源を耳にするためには海賊盤という怪しい世界に足を踏み入れなければならないということは何となくわかっていた。
だが東北の片田舎に住んでいた私にはそれらを手に入れる術がわからなかったし、レコード店で「ZEPの"Tour Over Europe"ください」などと云っても「ウチにはそのような商品は・・・」と困った顔をされるのがオチだった。やはり海賊版というのはコアなファンのみに開かれた地下世界でその入手には高いお金と犯罪を犯す覚悟が必要に違いないと私は失望とあきらめの境地へと落ちていった。

だがしかし、こんな私にも神は手をさしのべてくれたのだ。
当時ZEPに夢中でありながら読む音楽雑誌といえば「Music Life」「Pop Gear」といったアイドル洋楽誌であった私は、徐々にその内容に不満を覚えるようになった。「もっと良い情報が欲しい、もっと良い音楽を教えて欲しい」と、日課だった本や巡りの中で音楽雑誌を片っ端から立ち読みした。

そんな中、B5サイズの薄っぺらい文字だらけの一冊に出会った。
「Rockin'On」である。
今でこそ色々批判されながらキングオブ洋楽誌の座にいるが、現在のように発売日に平積みにされるようなものではなかったし、どちらかというとまだミニコミに毛が生えた程度という印象であった(飽くまで東北の片田舎にいた私の印象であるが)。
パラパラってめくると知らないバンドばかりが載っている。しかもそいつらに対してとてつもない思い入れで文章が綴られている・・・一体この世界は何なのだ。
さらに進むと広告ページが現れた。レコード店がお薦め商品のジャケットを掲載しているのだが、どうもおかしい。有名バンドがずらずらと並んでいるのだが、そのタイトル、ジャケットともに全く見たことも聞いたこともないものばかりなのだ。価格もどうも高めだ。よく見ると「コレクターズレコード/CD」だとかいう文字がある・・・これは・・・・あ!!

思春期の私がまたひとつ大人の階段の一歩踏み出した瞬間であった。
今まで悩んで勝手な想像を膨らませていた世界が、急に身近な場所へ現れたのだ。私はその雑誌を迷わずレジへ運び、その雑誌との付き合いは'98年中旬頃まで続くこととなった。

ブート広告を読むために「Rockin'On」を購読する日々が続いた。
しかし当時のこの雑誌を読み返してみると、あの時感じたほどブートレコード/CDを扱うお店の広告は多く掲載されているわけではないのが意外であった。多分今も営業中のディスクランド(西新宿)、後で触れる通販専門店ファーイーストレコード(当時荻窪。こちらも健在)など主だったところはこんなもので、逆に多いのが海外のテレビ番組やライブを隠し撮りしたブートビデオ取扱店広告。多分、ウブな私は海賊版とされるモノが雑誌でこうも堂々と広告を打っている事実に「Rockin'On」全体がブート広告だくらいのショックを受けたんだろう。

そうそう。今思い出したけれど、最初はこちらから手を出した。
「ZEPライブ映像の集大成。ペイジとプラントがアップで迫る」だとかの売り文句につられ(この手の文句って別の方のアングラビデオでもよく使われてる気がするな)購入した「Live Collection」との作品。通販で申込み何週間もわくわくしてやっと届いてビデオデッキに突っ込むと8mmビデオ程度の隠し撮りピンボケ映像に唄や動きと合っていないブートの音が悲しく鳴っている。これが延々と60分続く。それを見た親父が「これ不良品だろ?電話して文句云ってやる」と怒り出し、「いやこれはこういうモンなんだ」と冷静を装ったことを思い出した。こうして人は大人になっていくモノだ。

一応誤解無きように云っておくけれどブートビデオの中にももちろんすばらしいモノもたくさんあって'80年のネブワース公演を収めた映像や最初期にテレビ出演した際の映像「DanishTV」など未だに酒のつまみに時々引っぱり出してついつい夜更かししてしまうものだ。失敗は常に人を向上させ目と耳と勘を養わせる。

そんなこんなでブートビデオで何度か失敗を繰り返した私の関心は、当初の目的であったブートCDのへ戻ることになる。

さすがに今度は慎重になった。
当時'87〜'88年頃はまだメディアがレコードからCDへの移行期であり、オフィシャルものでレコードが2800円、CDが3200円の時代。ブートCDの単価はオフィシャルと同等が少し高めの3200円〜4800円というのが主流だった。当時の広告で名盤「Tour Over Europe 1980」の価格を見てみると、レコード2枚組が3800円と割安であるのに対し、CDはなんと11800円。1枚単価5900円である。こいつはますます失敗が許されない。

私は比較的ZEPに強そうな通販専門店「ファーイーストレコード」のカタログを取り寄せることにした。ここは現在も毎月「Rockin'On」に広告を出し続けている老舗であるが、広告の
●当店は会員制のレコード店です。登録会員以外の方はオーダーできません
という文句が実に秘密めいていて魅力的であったし 
●(中略)折り返しコレクターズアイテム1000点以上リストアップした通販カタログ、オーダー用紙を送ります
との言葉にたった1ページの雑誌広告では味わえない、じっくり商品を吟味できるすばらしさを予感したのである。

今考えてみても私のブート道が「ファーイーストレコード」(以下FER)から始まったというのは正しかったと思う。当時の少ない小遣いの中からではそう頻繁に買えるモノでは決してなかったのだけれど、詳細なカタログはブート知識を蓄えるのに随分と役に立ったし、注文から納品までも迅速だったという印象がある。
最近とあるコレクターのサイトに「本日極東(遁注・FERの俗称)からカタログ届く。○万円注文かける」との文句があったくらいだから現在も定評のあるお店なのだろう。私も数年このカタログを購読したモノだが、あれから数年。改めて会員登録をしてみようかと考えている。
そんなわけで次回はこの辺の話題から続きを書いて行きたいと思う。

(続く/99.5.7.)

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