すまいる魔人YOSHI
(BeachBoys
Cult Pages)
1.FLYING HIGH/Gene Clark
(A&M)
去年の私的ベストは、年末に買ったジーンの ROADMASTER だけど、今年のベストはこいつかな。1991年のコンピレーション
ECHOES 同様、シド・グリフィンの気合の入ったライナーがうれしい。
掘り出し物は1968年頭の、A&M移籍時の最初のセッションでの未発表曲3曲。
個人的にはもっとも好きな時期の作品なだけに、ディランのI Pity The Poor Immigrant を始めとするアウトテイクの公表は、今年最高の贈り物だった。
ミックス違いの One In A Hundred、She's The Kind Of Girlにも打ちのめされたね。
ROADMASTER 収録のテイクとは異なり、イントロのセッショントークや、かなりラウドにミックスされたロジャー・マッギンの12弦が、1965年のバーズ・マジックを完璧に再現してくれる。
でも、ジーンが作品的に一番充実していたのは、やはり ROADMASTER からNO OTHER、TWO SIDES OF EVERY
STORY に至るあたりかなあ、なんてこのアンソロジーを聞きつつ考えてしまう。
70年代LAセッション・ミュージシャンたちによる「いかにも」な音は、チト勘弁して欲しいけど、それを補って余りある、もっとも彼らしい「さまよえる魂はどこに行く」的なジーン節が堪能できるから良しとしよう。
2.SEA OF TUNES UNSURPASSED MASTERS SERIES/The
Beach Boys
1998年最大級の衝撃はコレ以外にない。ホームページまで衝動的に作ってしまうほどのものだったからね。
1990年にビーチ・ボーイズの 2in1 に出会って、初めて彼らの音楽の捉え方が変わっていったのだけれども、それがどういった理由によるものかはイマイチ釈然としなかった。自分自身、90年代前半ってロックそのものからちょっと離れかけていた事もあったしね。
しかし、このシリーズの怒涛のごとくのリリースによって、今年、自分のビーチ・ボーイズ観は決定的な変化を遂げる。
もっとも見方が変わったというより、今までモヤモヤしていたものがようやく クリアになったという感じだ。
ここでこまかいことは書かないけど(自分のページに書けることは書いた。)、一つ言えるのは、ブライアンのクリエイトする作品は、人がよく言うような、ヴォーカルによるハーモニーの美しさだけでなく、楽器演奏のハーモニーも
同レベルの美しさでもって構築されているということ。
自分の望む音が出来るまで何度もミュージシャンにやり直しをさせるその偏執狂的な姿勢は、年を追うごとに強烈になってくる。
振り返ると、SEA OF TUNES のこのシリーズは、VOL.12 までで35枚もの CDに及ぶわけだけど、それだけの量をもってしても、あの天才の偉業のごく一部分しか、われわれの眼前にしか提示されていないわけだ。
残念な事に、これはあくまでもイリーガルな「作品」だ。
本来ならキャピトルが責任もって、後世にこの歴史的遺産を伝えるべきだと思う。
追記:この原稿を書いている最中に、最新のALTERNATE PET SOUNDS が到着した。
CD 8枚組み(実質的には 7枚)のボリュームには圧倒されるばかり。
オフィシャルでは省かれてしまったヴォーカル・セッションとオーバーダブが 含まれているのが嬉しい。もっとも普通のファンにはオフィシャル・ボックスがあれば十分すぎるほどですけど。
3.Andy Paley Sessions/Brian Wilson
IMAGINATION と前作ソロのブランクは丸十年あったわけだけども、ブライアンはその間、70年代みたいに廃人同様に戻っていたわけではない。
確かに裁判ざたなどのゴタゴタはあったが、アーチストとしては、60年代以来の輝きを取り戻していたのだ。
その皮切りがセカンド・ソロ SWEET INSANITY だった。
しかし、またしてもオクラ入りしたまま。
次が1994年からスタートしたアンディ・ペイリーとのセッションだ。
ブートが海外では出回っているようで、なぜか国内では入荷していないが、あちらの熱心なファン、John Barone さんのサイトに数曲がフル・コーラスのReal
Audio で掲載されたので、世界中のブライアン・マニアからこぞって絶賛の声が聞かれるようになった。
まずは Gettin' In Over My Head。すべてを吹っ切ったかのような甘く美しいブライアンのリード・ヴォーカル。バッキング・コーラスも恐らくすべて自分だろう。
PET SOUNDS の最良のエッセンスを90年代に凝縮したかのような名曲だ。
そして ENDLESS HARMONY に収録されるはずだった Soul Searchin'。
カールがリード・ヴォーカルをとりマイクとアルがバッキングに入る、正真正銘のビーチ・ボーイズ・ナンバー。
めくるめくコードチェンジ、ジェット・コースターのような曲構成の You're Still A Mystery もビーチ・ボーイズとして録音された。
60年代そのまんまのブライアンのファルセットが、今までの苦労人生活を嘘のように吹き飛ばす。
極めつけは、I Just Wasn't Made For These Times の続編とも言える、赤裸々な自分を晒した絶望的な歌詞の
It's Not Easy Being Me だ。
しかし、リード・ヴォーカルは I Just 同様、悲しいほどの美しさをもって輝いている。
まだまだあるが、結論としては1990年代におけるブライアンの最高傑作群が、アンディとのセッションのときに誕生した、と断言してもいい。
もちろん、完成されたプロダクションは少なく、中にはデモ・レベルの曲もある。
何とかこの作品群を、ブライアン自身が誰の手も借りずにブラッシュアップして世に出して欲しいものだが、今現在の状況では恐らく無理だろう。
またブライアンとビーチ・ボーイズの幻の音源が一つ増えてしまった。
◆BB専門レーベル「Sea of Tune」を中心にBBのブート情報をいち早く届けてくれるすまいる魔人YOSHIさん。偶然氏のサイトを発見、思わずメールを出してしまったというのがお近づきになったきっかけ。
こまめに拝見しております。今後とも宜しくお願いいたします。'99年も期待しております!
(遁レコ)
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