■今、龍光の演技に
触れることが出来る場所
恐らく現在唯一の「誰もが動く、しゃべる龍光の芸に触れられる場所」が大阪は難波にある「ワッハ上方」[※28]こと大阪府立上方演芸資料館です。ここに龍光の演技の映像が保管されているとの情報を手品好きの方と思われる方の日記サイト[※29]で知りました。ワッハ上方には図書館があって、そこには貴重なビデオテープや録音テープ、書籍などが保存されているとのこと。で、この方はここでアダチ龍光と松旭斎晃洋の映像を見たというのです。
私が出掛けたのは2003年7月27日でした。ワッハ上方は、漫才、落語、漫談、奇術など上方演芸に関する資料を収集・保存・展示するいわば関西お笑い歴史館。江戸時代の寄席の発祥から庶民の娯楽として発展していく様や、レコード、ラジオ、テレビとメディアの発展とともに変遷していくお笑いの形、そしてその時代ごとのスターが大変わかりやすく展示してあります。
もちろん一番の目的は、館内にあり無料で利用できる演芸ライブラリー。上方演芸に関するテレビ番組映像や文献に特化した図書館であります。
受付のお姉さんに
「アダチ龍光さんの映像を見たいのですが」
と伝えると一瞬「知らないなぁ」という顔をします。
「上方ですか?」
「手品師で吉本に所属してまして、ここにテレビ出演の映像があるっ て聞いているのですが・・・」
心の中では、ご馳走を目の前にして、なかなかありつけない犬が必死になってるみたいな気持ちだったのですが、冷静な笑顔でお願いすると快く端末で検索してくれました。
ありましたよ、ありました。
そんなわけで、お姉さんに指定されたブースに着席。動く、しゃべる龍光さんと遂に対面であります。
1974年8月朝日放送「おーるど寄席」(司会、桂米朝)出演での龍光。当時78歳ですから晩年の演技[※30]。
まずは、ステッキを使った芸とトランプネタを黙ぁっ〜て披露。客席に「どぉだ!」と言わんばかりの堂々とした態度。ひとしきり拍手が鳴りやむと、堰を切ったようにしゃべり出す龍光。
「どうもどうも東京におりますもので。大阪は30年振りでしてね。 でもね、その前は20年位大阪にいたんですよ。当時は若かったで すなぁ」
と、先ほどの「どぉだ!」とは一転、朴訥とした新潟弁トーク。この緩急がたまらない。会場大爆笑。私も可笑しくってたまらない。
「じゃあ、今日はご家庭で楽しめる簡単な手品を3つやります」
と
・赤白の色が入れ替わるひも
・先からお金が出てくるせんす
・はさみで切る度に大きくなる紙のわっか
を披露して、なんとひとつひとつタネ明かしをするアグレッシブさ。
確かに「先からお金が出てくるせんす」なんてハンズでも売ってる面白グッズみたいなネタなんですけど。一般には「成金センス」って言うらしいです(笑)[※31]。
70年代にこんなことやってるなんてマスクマジシャンもビックリであります。
「これなんか明治時代からある手品ですけどね、先から出てくるお金 を50円玉にすると昭和の手品になるの」
なんてなMCもたまらない。十八番のパン時計とか見たいネタもあったのですが、約8分の演技に大満足でした。
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