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■芸人の言葉、文献から見る龍光像
「奇術協会の会長サン」らしく、黒の背広にチョビ髭を生やし、一見、イギリス紳士風の高座は絶品。それに加えて、越後訛りのまだ残る独特の話術のうまさ。まずは「最高の寄席の色物」である。
「談志人生全集第1巻・生意気ざかり」(講談社)[※20]で、立川談志は龍光の芸をこのように述べています。この本の「見どころ聞きどころの芸人たち」というコーナーでは、談志と交流のあった芸人数十人を各人2ページほどの短い文章で紹介しているのですが、桂文楽に続いて2番目に龍光が登場し、手品のネタは古いがひとたび舞台に上がれば話術で会場をどっかんどっかん沸かせる様や、普通手品師は楽屋でタネを仕込むのを他人には見せたがらないのに、龍光はそんなことお構いなしで、他の芸人が道具に触っても気にしない、そんなおおらかな人柄を親しみを込めて語っています。
このおおらかさというか飄々とした龍光の人柄は、色々な本で共通に触れられていて、挙げ出したらきりがないのだけれど、特に笑ったのが矢野誠一「さらば愛しき芸人たち」(文春文庫)[※21]のエピソード。
トランプの奇術がうまくいかなかったことがある。ほんとだったら、スペードのエースが出なければならないのに別のカードが出てしまったのである。なのにまったく表情を変えることなくやり直して見せたのだが、また別のカードが出てしまう。このとき、たったひとこと、
「ま、たまにこういうことがあるの」
といっただけで、平然と次の奇術に移ってみせた。てれるでもなく恥じるでもなく、もちろんあわてるでもなく、ただいつもと同じように芸を続けていくのを見て、いったいこのひと、おどろくということがあるのだろうかと考えた。
まったくもってマギー司郎もびっくり。というかマギー司郎だって失敗のあとにフォーローの芸でオチを付けるだろうってのに、そんなこんなもお構いなしと来たから驚きである。
「謎の死」やら「アダチ家のタブー」なんてものものしいキーワードからはあまりにもかけ離れていて、思わず笑ってしまうことしばし。
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引用文中「龍光」「竜光」と表記を統一しておりません。原文ママです。
[※20]
談志人生全集第1巻・生意気ざかり
(立川談志/講談社/1999.6.14刊)
「見どころ聞きどころの芸人たち」は他にも収録書籍があるはずです。
[※21]
矢野誠一「さらば愛しき芸人たち」
初版単行本1985年12月刊(文芸春秋)。文庫は1989年2月刊。
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