2000.3..28 up
ばんでぃー New!
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募集要項
→'98年私の5枚
→'97年私の5枚

 



フルタツ/サイケピンキーズ
mail:f-psyche@ja2.so-net.ne.jp
url:http://www01.u-page.so-net.ne.jp/ja2/f-psyche/
 


■ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンド/Twins I&II(ワーナー/WPCR-10609〜10)
年の瀬でいきなりこんなものが発売されたおかげで、僕の「99年私の5枚」は直前で大きく番狂わせに。82年のライブ・イン・ジャパンの完全版です。天才ベーシスト、ジャコ・パストリアスがウェザー・リポート脱退後に結成したいわゆるワード・オブ・マウス・ビッグ・バンドの、大人数によるダイナミックなサウンドを聴くことができます。しかも彼の全盛期の演奏で、これにはもう圧倒されるしかない。そして35歳の死というのはあまりにも早すぎた(涙)。

その昔ギタリストのパット・メセニーが「もし演奏スタイルに著作権が存在するならばジャコは億万長者だ」みたいなことを言ったと記憶していますが、まさにその通りで、あの当時から現在に至るまでそれは続いています。ここにもその内の一人がいます。僕は今も昔も下品で締まりのないロックベースを弾いていますが、演奏者として彼から受けた影響はもう計り知れません(もちろんあれほどはとても弾けないけど)。音楽ジャンルとしてのフィールドは違えど、ベースの奏法の基本的なところは殆どが彼の請け売りといっていいかも知れません。

まあ演奏テクニックがどうとかってのは二の次だと思います。肝心なのはそれが音楽としてどう展開されているかであります。彼が真に偉大だったのは、テクニックの開拓に終始したんじゃなくて、それで新しいサウンドが創造できたところでしょう。そういう意味ではジミ・ヘンドリクスと並ぶ本当に偉大な演奏家です。それにしてもこの大編成でベースがちっとも埋没することなく、しかも必要以上に出しゃばることもなく調和していく様は芸術的という他はありません。

ベースという楽器は通常バンドの中でも地味な位置づけで、特にロックという分野ではツブシのきかないパートというメージが強いけれど、そんなことをすべて覆してしまうこのサウンドを聴きながら、今となっては余計なこともあれこれ考えてしまう。ジャコがいなかったら、MIDI音源にもフレットレスベースの音はなかったかも知れない、あったとしてもきっとあんな音ではサンプリングされなかったに違いない、とか。

というわけで、ひたすら個人的思い入れによって、これが今年の一番です。

■this heat/health and efficiency(these record/these 12
いやびっくりした。いきなりCD化・再発されるなんて。80年にラフトレードからリリースされたThis Heatの12インチ(当時はアナログ盤)です。このグループから受けた衝撃は今も忘れられません。

内容はこのグループにして、殆ど唯一のバンドらしい演奏じゃないでしょうか?今だに愛聴する1st.アルバムは音楽が本来持っているはずの整合感とか生気を感じさせない上に、バンドとしての形態もあるとは思えないんですが、ここではちゃんとギターやドラムの音が・・・ってのも変な話です。

あうっ!チャールズ・ヘイワードのドラムって何てカッコええんだ!そういやこの人その昔はフィル・マンザネラ(元ロキシー・ミュージック)とクワイエット・サンなんてやってた腕利きドラマーだったんだな、とか思い出したりするスリリングなリズムです。リフっぽい無機質な歌が終わったところで、この曲は際限のない繰り返しモードに入ってしまいます。アナログで初めて聴いた時は、レコードに傷でもついてて針が進まなくなってるのかと慌てたほどしつこい。しかもこれでエンディグまで続く。期待する展開を完全に裏切るってのもこのグループの素敵なところでありますが。

それにしても今回のCD化この1曲だけとは。アナログ12インチのB面にはシンセサイザー(かどうかも怪しい)の発振音を周波数をちょっとずつ変化させていくだけで展開も何もない、 方法論は現代音楽風なのだけどもはやアンビエントなどという代物とも違う曲(と呼ぶのも抵抗ある)が入っていました。それがタイトル曲との対比で何とも面白かったんですが、そちらは未収録で残念。

■ヘフリガー/デーラー/シューベルト:3大歌曲集(キング/KICC 9314/6)
う〜ん、日本の年末にはなぜかベートーベンの第九ってのが定着してますが、こういう寒い季節になるとあっしはシューベルトの「冬の旅」でござんすな。これと「美しき水車小屋の娘」「白鳥の歌」を含むいわゆる3大歌曲集は自分にとって座右の銘とも言うべき音楽となっております。

数年前にこのヘフリガーとデーラーのコンビによる演奏を知った時はその斬新さに打たれ、いずれは3枚揃えたいと思いながらいつの間にか月日が経ってしまいました。ところが先日ショップでこれらが3枚組になって再発されているのを見たとたん、その気持ちが再び燃え上がり即ゲット。

3大歌曲集は以前フィッシャー=ディースカウ大先生のバリトンでよく聴いたものですが、こちらはそれよりキーの高いテノール。そのせいか「美しき水車小屋の娘」なんかは曲集のテーマとよくマッチしてとても若々しく聴こえ、より本来のイメージと合っているような気がします。もちろん他の2つも負けず劣らずいい出来なんですが。

特筆すべきは伴奏がピアノではなくて、シューベルト時代のハンマーフリューゲルで演奏されていることです。ピアノより小型なため音像も深くはないし、素朴な音でハンマーのノイズも聞こえたりするんですが、このテノール+ハンマーフリューゲルという組み合わせはシューベルト本人が作曲した状態そのまんま。この歌曲集のファンにとっては実に感慨深げな作品に仕上がっています。それだけに本当に新鮮な気持ちになって聴くことができる良いCDです。

余談ながら例えとしてよく使われる「白鳥の歌(Swan Song)」とは「白鳥は死ぬ直前に一度だけ美しい声で鳴く」というヨーロッパ方面の伝説が元なんだそうです。それでシューベルトの遺作になってしまった歌曲集のタイトルにもなっているわけですが、ロックの世界でもいろんなとこで使われてますね。

■ロイ・ウッド/エキゾチック・ミクスチャー〜シングルズ(MSI/MSIF 3667/8)
近年新作をリリースしていないこの人だから、こういう総集編的なCDでも大歓迎になってしまいます。しかもソロ・ワークの殆どをコンプするシングル集。

僕にとっての目玉は2CDの2枚目。80年代以降の音源は入手困難だったし、故フィル・リノットと結成した「ロッカーズ」なんかは今回初めて聴きました。80年代の後半に傑作アルバム「Starting Up」をリリースして以来、フルアルバムにはお目にかかってないから、この時期のシングルがまとめて聴けるのはうれしいことです。

順序が逆になっちゃいました。1枚目の70年代の作品はおなじみな曲ばかりだけども、今になってあらためて聴いてみるとこの人のマニアっぽさというか、芸の細かさというか、その手の込んだ音作りに驚かされてしまいます。ビーチ・ボーイズのオマージュであり、最大のヒット曲でもある「Forever」(ブライアン・ウィルソンもお気に入りだったという)なんかは、至るところでその片鱗を垣間見ることができ、両方のファンは倍楽しめます。ファルセットが「I Get Arround」、2コーラス目にターンバックする時に無理矢理「Help Me Rhonda」のフレーズを入れてるとか、間奏で「Darlin'」のメロが登場するとかには思わず笑ってしまいますが、単なるパロディではなくてチェロとかストリングス系の使い方は完全にこの人独自のものなところが凄い。あと「Oh What A Shame」なんかは「Carl and The Passions」時代のBBそのもの。それからやはり名作「Mustard」からの収録曲は多いです。こういういろんなポップスの要素が複雑に絡み合った音楽というのは、当時よりむしろリスナーがついていける今の方が正当に評価できるような気がします。

この人の音楽に触れるたびにいつも思うんですが、こんなもの凄い才能がありながら大ブレイクしなかったのはやっぱりマニアック過ぎたんじゃないかと。例えばシングルのB面曲も収録されてるんですが、これが趣味に走りまくったインストとかでやたら実験色が濃い。こんなんじゃ多くの人は引いてしまいますねえ。それからややシリアスな雰囲気に欠けるってところがあるとこかな。本人が何でもあまりに軽くやってのけるもんだからスッと通り過ぎて行っちゃうのかも。ホントにもったいないことです。

■ エンゲルベルト・フンパーディンク/ザ・ダンス・アルバム(ロックレコード/RCCY-1061)
最初このアルバムのことを知った時、どっか有名なプロデューサーが昔の音源をリミックスでもしたのかと思いました。ところがこれは正真正銘ご本人の歌い直しによる新録アルバムということが判り、ショップに走った次第であります。何だか嬉しくてしょうがない。

邦題の「ザ・ダンス・アルバム〜情熱のクァンド・クァンド・クァンド」ってのは大好きな曲のタイトルだけにグッとくるものがあります。このオリジナルはあたしの個人的ポップス史の原点とも言うべき、大時代がかった素晴らしいアレンジと歌唱なのですが、今回はそれ以外の曲もダンスものとして甦っています。

それにしても本人の声が少しも衰えていないのはさすがです。大ベテランの面目躍如というべきか。個人的にはこの手(ダンスアレンジもの)は苦手な方なんですが、素材が名曲揃いで、しかも当人の歌とあっちゃあこれが平気で聴けてしまうんですな。元曲の良さも当然あるけど、「ラスト・ワルツ」「リリース・ミー」そして前述のタイトル曲の出来は特に秀逸。

総括
こんなムチャクチャなラインナップで総括も何もあったもんじゃありませんが、依然として再発・CD化に胸がときめくのは、さすがに歳とったからかなと。でも短い人生の中で一体どれくらいの音楽聴けるのかって興味はあります。既存の音源だって知らないものの方がまだまだ多いんだよね。そう考えたら優先順位で取捨選択するしかない、なんて言い訳くさいけど(笑)。(99.12.25)


番外編
*遁注・以下は「遁レコ5枚番外編」としてフルタツさんのサイトに執筆された原稿から転載許可を頂戴し掲載するものです(感謝!2000.1.9)

■The Move/OMNIBUS THE 60s SINGLES As AND Bs
ロイ・ウッド(ロン・ウッドじゃないよ)が60年代に率いたグループのシングル集。モノラル時代のカサカサした音も含め60年代テイスト満載で、ブリティッシュ・ポップの王道というサウンドはもう大好き。しかも凡庸なそれではなく、いたるところでヒネリが入ってて一筋縄ではいきません。やはりこのへんが今だ取り沙汰される理由なんでしょうね。後期メンバーのジェフ・リンはその後ELOで世界的成功を収めますが、そもそもこのELOの創始者がロイ・ウッド。彼はアルバム1枚だけでELOを脱退しちゃいますが、その後も優れた作品を発表しています。

■Elvis Costello with Burt Bacharach/Painted From Memory
僕はマヌケにも発売当初(98年10月)はこんなのが出てるの知らなくて、99年に入ってからやっと聴きました。エルビス・コステロとあのバート・バカラックの共演盤です。すげえ組み合わせ。大御所バカラック先生のアレンジには唸らされるばかりで、もう説得力あり過ぎ。コステロさんも何だかうますぎて僕にはちょっと抵抗もあるけど、心底歌い上げてます。こんな見事な完成品を見せられた日にゃ、あたしゃもう何も言えませんね。ともあれ素晴らしい盤であることに変わりはありません。

■シャイー指揮&ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団/ショスタコーヴッチ:フィルム・アルバム
リッカルド・シャイー指揮の「ジャズ・アルバム」「ダンス・アルバム」に続くショスタコーヴッチのシリーズ・アルバムです。以前「ジャズ・アルバム」で「二人でお茶を」の見事なオーケストレーションに圧倒されましたが、今回は映画音楽用の曲集だけあって、動的な展開のものが多いです。う〜んショスタコーヴッチと言えば第二次大戦中やスターリン時代を背景にした交響曲とかに割といかついイメージがあるのだけど、このシリーズは親しみやすい曲を集めたものです。まあ本人は当時(1950〜60年代)依頼された仕事としてこういう映画音楽を作ったみたいですが、曲に対するユーモアのセンスを垣間見ることができます。

■Slapp Happy/Sort of
お〜やっとCD化されたか〜。この数年で過去のアルバムやメンバーの超マイナーなソロ作までCD化再発されているってのに、この1st.だけがなぜかCD化されなかったのは変だと思ってたんだよな。しかも昨年は何と再結成されて新作まで出しちゃったんだからすごいとしか言いようがないけど、ファンにとってはまさに待望のCD化。しかもボーナストラック付き!現代音楽家がレコード会社に要請されて結成したグループだから、ポップといってもやはり何かヘン。この周辺事情を語り出すとキリがないのでやめときますが、当時は妙に牧歌的だなあと思っていたサウンドも今聴くと何だかガチャガチャしてて(バックにFaustが参加してるせいでしょう)、妙な感じを受けます。ボーナストラックは発売されたかどうかも判らないシングルのB面曲だそうですが、こちらもその傾向をよく反映しています。何にせよあたしは大喜び。

■To Heart(プレステ版ゲームソフト)
笑いたくば笑え!99年あっしにえらい影響を与えたのがこのゲーム、PS版「To Heart」です。まずこのためだけにプレステ買いました。そして今年前半の音楽活動は殆どこれのMIDI制作でした。よってこれが今年の締め。
ジャンル的にはいわゆる恋愛シミュレーションとかに分類されてしまうんですが、単に女の子と恋をしまくるだけじゃなくて、信じられないことにゲームという枠を越えた感動を与えてくれます。「ゲームなんて・・・」という偏見を完全に粉砕してくれる作品です。


 

(C)TONSEI RECORDS