2年目の3月12日…から少し経って
先月発刊された松村雄策さんの「小説すばる」での連載がまとめられた新刊「ハウリングの音が聴こえる」(河出書房新社)読了。
あなたの文章に向き合うと、どうしても夢中になってしまうのです。
『もうその話は何度も聞いたよ』と突っこみたくなるのは無粋。
『おっ!そのエピソード来た!』と落語に向き合うような、松村さんと飲みの席をともにしているようないつものあの感覚がたまらないのです。
今回、子供の自立や引っ越しと一人暮らし、バンド活動の再開、病気、老いの自覚など2014年〜18年の松村さんのいた環境に対するへの思いが語られるところがあります。そこに私自身も歳を重ねてきて、新たに松村さんの文章から深く共感と感銘を受けるところがありました。
松村さんが「だいたい、この時期には、僕にはあまりいいことは起こらない。基本的に、春とは相性は良くないようだ。」(P144)と書いていてびっくり。
松村さん。そうですよねぇ…私も何だか春は苦手です。
この数週間心身ともになんだか調子が掴めなくて、振り返ると、この5〜6年はどうも春は嫌なことが起こったり、不安定な気分になるなぁ…ということを思っていました。
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なんとかこの春嫌いを克服したいのです。
松村さんの執筆活動最初期からその愛着が語られているアニマルズとそのリーダー、エリック・バードン。この本でも深い愛情を持って触れられています。
私はなぜか「朝日のあたる家」くらいしかほとんど縁がなかったのです。
「でも『Astral Weeks』は聴いたよな」
と思いましたが、いやいや、それはゼムのヴァン・モリソン…つまりそんな程度の知識なのです。
そろそろ正面切って向き合ってみよう。
で、初期の著作である「アビイ・ロードからの裏通り」や「岩石生活入門」を引っ張り出してたら、「岩石生活入門」に松村さんのサインがあった。
これってなんだっけ??
以下は、何度も書いている話だけれど、私が松村さんと相対する機会があったのは人生で2度で、1990年代に渋谷陽一とのトークライブに行った時と、2000年代初めに早川義夫さんのライブを南青山MANDALA観に行って(その頃のバックは大阪の兄貴たち、ヰタ・セクスアリスだったのです)、打ち上げに参加させていただいた時に、早川さんの隣に松村さんがいて、その正面が私でした。
この日、事前にUさんを通じて聴いていただいていた私のバンドの1stへの松村さんのお言葉『ヘタクソだけどかっこいいね』は一生の宝なのです。
いやいや、今思えばその場しのぎの社交辞令だったと思いますが…。
前者のトークライブの時に、キース・リチャードが表紙の「ロックング・オン」最新号にふたりのサインをもらったことは覚えています。後者は「定本 ジャックス」に『こんな本捨てなさい』と早川さん、『いやいや、これはバイブルですよ。』と松村さんのやりとりを交わしながら早川さんからサインをいただきました。この時に松村さんから「岩石生活入門」にサインを求めることは考えづらいので、前者の時か、はたまた港区立図書館で定期的に行われていた「ロック講座」でサイン本を購入したのだろうか。
こういうことはちゃんと記録を残しておかなきゃと反省。
「ハウリングの音が聴こえる」の出版に尽力されたストランドブックス米田郷之さんによるあとがきで、松村さんに「半分くらい書きかけ」の小説があることが2004年のトークイベントでの発言とともに触れられます。
『ある年の6月29日から7月3日まで。ビートルズが日本に居た5日間、数十年後の5日間の話で、記憶喪失の女の人と主人公が悩み苦しむという話です。』(P251)
いつか読んでみたいと思いつつ、松村さんがあの5日間の物語を自分自身で描くことにこだわっていたことに胸が熱くなりました。