大滝詠一のとんねるず提供曲「ゆうがたフレンド(USEFUL SONG)」に関する妄想
はー。
これだったのか…。
かつて、とんねるずの石橋貴明が自身のトーク番組「石橋、薪を焚べる」(フジテレビ系・2020年9月1日深夜放送)で松本隆に語り『え!?そんなのあるんだ!』と驚いた、大滝詠一のとんねるずへの提供曲のお話。
歌入れまでしたけれど、石橋がイメージと違うと困惑し、ダメ出ししたというその曲「ゆうがたフレンド」が、ついに2023年3月21日リリースの大滝詠一「NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」に収録されました。
当時の石橋の発言を報じる「スポーツ報知」の記事が残ってました。
以下、引用です。
石橋は、大瀧さんに「20年ぐらい前」に「とんねるず」の曲を1回だけ依頼したことを明かした。その時、「会ってくれないだろうなと思ってたら、会ってくれて大瀧さん」と明かし、大瀧さんが住んでいる東京・福生市から「えっていうぐらいボロボロのローレルに乗って来て」と石橋に会いに来たという。
その時に石橋が「大瀧さんのかっこいい曲、ぜひお願いします」と頭を下げると、大瀧さんは「もう書けないんだよな。石橋君が言っているような曲は書けないんだよ」と伝えたが、後日、スタジオに行くと著名なミュージシャンがそろって作詞がコピーライターの糸井重里氏が担当した曲が完成していたという。
【スポンサードリンク】大瀧さんが「とりあえず聞いて」と伝え、曲を聞くと石橋がイメージしていた音とはまったく違う曲で「これは一体…」と石橋が戸惑うと「だから言ったろ、石橋君、こういうのしかもう書けないんだ」と大瀧さんは明かしたという。
石橋は「えぇ、これ…ちょっと違うんですけどイメージが」と困惑しながら相方の木梨憲武と歌ったが「大瀧さん、これ違うんですけど」と石橋が大瀧さんに伝えると「わかった全部買い取るからって、僕の資料にしておくから」と明かしたという。
大瀧さんが作曲した「とんねるず」の幻の一曲を石橋は「多分、大瀧さんの家のライブラリーに幻の一曲があります」と話していた。
まさか、その音源がデモレベルでなく、ここまでしっかり出来上がってるものとは思いませんでした。演奏だけでなくて、とんねるずの2人も表情豊かにしっかりちゃんと歌ってる。
え?
なんでこれでボツにしたの?
とびっくり。
録音当時のタイトルは「USEFUL SONG(仮)」だったのかな。
「NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」の湯浅学さんのライナーによると、2005年暮れにとんねるずの新曲として、そしてテレビ番組『みなさんのおかげでした』のテーマ曲として依頼されていたということ。
当時のとんねるずの音楽活動は、取り急ぎウィキペディア情報だけれど、野猿としてはラストシングルの2001年「Fish Fight!」、石橋のソロ活動として松田聖子とのSEIKO with Crazy.T名義での2004年「Smile on me」、木梨は清志郎とのユニットでの2002年「ガンバレ日本」以来・・・そしてとんねるずとしては1996年「おまえが欲しい」以来の約10年ぶりとなったかもしれないシングル。
そしてこの時期の大滝さんといえば、2003年のシングル「恋するふたり」のヒットを経て、福生45スタジオの復活、ナイアガラ旧譜の周年リマスターにも着手などご活発。
たらればを言ってても仕方がないけれど、もしこの時期に、このとんねるずと大滝さんのコラボが世に出ていたら、我々世代、そして先輩ナイアガラー含め、決して少なからぬ人が興奮しただろうと夢想します。
そして、それに充分にたる楽曲ととんねるずの歌だと思いました。
この音源を世に出していただいたことに感謝。
しかし。
それにしても、なぜ石橋は「これ違うんですけど」と拒んでしまったのか。
大滝さんが、晩期を盛り上げていた「クレージー・キャッツのようには『まだなるつもりはない』」とでもいった石橋なりの反抗心だったのだろうか。
私自身、35年近く前に彼らに夢中になり、それからだいぶ関心が離れていた2000年代に、久しぶりのとんねるず名義のシングルが出る、え? それが大滝さん作?!となったらぐぐっと腰を浮かして騒いでいたでしょう。
で。
ここまで完成度の高い録音が残されているだけに不思議で仕方がない。
でも、それが当時の石橋の感覚やこだわりだったのでしょう。
でも大滝さんはとんねるずにこの曲を送りたかった。
このタイミングとご縁の難しさよ…。
たらればの歴史を想像するのはわくわくします。