松村雄策「僕の樹には誰もいない」を読んだ。
松村雄策「僕の樹には誰もいない」(河出書房新社)を読み終わりました。
レビューめいたものを書いてみようかと思ったのだけれど、どうもうまくいかない。
あきらめて、SNSにぶつぶつ呟いた文章を時系列に整理してみることにします。
【2022年10月26日】
他の図書館から取り寄せてもらってた絶版本を借りに行き(あぁ・・あの方が編集なのか)、読みたいと思っていた新聞記事を写させてもらって、家に着いたら郵便受けに心待ちにしていた新刊が届いてた。
幸せだ。
【2022年11月11日】
松村雄策「僕の樹には誰もいない」を読み進めていると、ポール・デルヴォー展の話が出てきた。
「あ、私も見に行ったなぁ」と古いツイートを検索したら2013年の春だった。
松村さんが観た府中のあと巡回の埼玉県立美術館に行ったのだ。
その時買った「エペソスの集いⅡ」の複製はずっと部屋に飾ってある。
デルヴォーを知って好きになったのは多分学生の頃読んだ澁澤龍彦でだろうと思う。
好きだった画家を松村さんが触れていたことがこの文章を雑誌で読んだ当時もうれしかったことを思い出した。
【2022年11月15日】
移動の飛行機で松村雄策「僕の樹には誰もいない」を読み進める。
リアルタイムで掲載誌の「ロッキング・オン」で読んだものも多い。
ポール・マッカートニーのライブで、興奮する同年輩の大人に
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『こいつは70年代にビートルズやジョンやポールを馬鹿にしていたやつだろう』
『ツェッペリンもパープルもEL&Pもクリムゾンもいなくなったからだろう』
と毒付くのはまさに松村節。
元ジャックスの水橋春夫さんからの誘いで、約30年ぶりにライブをした話なんかもしみた。
僕もこの時期、水橋さんのバンドと対バンしたんだ(2017年4月30日〜5月7日(日)開催「JAM FES 2017」(於・新宿JAM)。2017年5月4日(木)大阪の兄貴、ヰタセクスアリスのフロント、無礼人と奇島残月のユニット、らぶ・ひるたァ企画「深夜特急アングラ便」枠に出演)。
そしてその翌年に水橋さんが亡くなってしまった。
そのその時はホント、なんだか頭が真っ白になってしまったんだ。
そんなことも思い出した。
でも。
何年掛かってもいいんだ。
突き動かされた時にやればいいんだ。
病気をして、老いとも向き合う松村さん。
でも。
言ってることはなにも変わってない。
酒を飲みながら先輩から話を聞いているような気分になる。
でも。
読み進めた先に、あの2021年冬の「Still Alive And…」があることを知っている。
そこに近づいていくのが少し重たい。
【2022年11月17日】
松村雄策「僕の樹には誰もいない」読了。
とうとう辿りいてしまった「Still Alive And…」と米田郷之氏によるあとがきに電車内で涙のこみ上げるのを抑えきれなかった。
改めて…松村さんの文章が大好きだ。
そしてこの人のような文書が書けるようになりたい。
改めて、そう強く思った。
いったい何十年こんなこと言い続けているんだろうか。
でも僕と松村さんとの関係はまだまだ終わってはいない。
だって松村さんの本の10冊の内、前作の「僕を作った66枚のレコード」はキンドルでしか読んでないんだから。
手元に本がないから松村さんの本は全部揃っていないのだからね。
僕は『僕を作った66枚のレコード』を持ってはいない。欲しいとも、思ってはいない。一生涯、手に入れないつもりでいる。
それはどうしてなのかというと、『僕を作った66枚のレコード』を買うと、松村さんの本が全部揃ってしまうからである。全揃うということは、つまりそれで全部であって、終わりということになるのである。
(これのわかる人がニヤリとしていただければうれしい。)
あとがきで、松村さんの人柄に触れたこのことこそが、この稀有な書き手を信頼する理由だったのだと思います。
「松村さんは、真っ当さの通じる、気遣いの人でした。権威主義というか、立場をかさに着てエバる人を嫌っており、腹黒かったり裏で暗躍している、あるいはビジネス的な論理だけで人を動かそうとするーーーような人を軽蔑していました。」(P290)
そんなことじゃ、人生は損な役回りに立ちかねないのだけれど、そんなことはわかっているのだけれど…。
僕も真っ当さと気遣いだけは失わずに生きていこう。
人生や世の中が理不尽やあべこべだらけだってことくらい、もうさすがにわかってる。
いちいち泣いたり怒ってたら、立てる腹も涙もいくらあっても足りない。
(でも、時々泣くけどね。怒るけどね。)
身の丈に合わない権力や金、色で人はどうしてこうもおかしなことになるのだろうか。
でもそして、一寸先は我が身だとも思う。
徳を積むしかないのだろうと思う。
正義なんぞ振りかざしたところで、自分が損するばかりか、自分の方が間違っているようなことに陥れられるだけ。
そもそも自分の正義なんぞ、裏を返せば相手の悪でしかなく、結果対立しか産まない。
そんなことはいい加減わかってる。
でもさ。
ヘラヘラ笑いながら、なんとか少しでもぎりぎりまで正義を貫きたいのよね。
どこかで「伝えればわかる」「話せばわかる」という期待を少し残してるのよね、きっと。
でもね。人に期待しちゃだめよ。信じちゃアホをみるのよ。
だから、ただヘラヘラ笑って自分を貫けばればいいんですよ。
ヘラヘラ笑ってれば。
(・・・って、松村さんはそんなことひとことも言ってないです。)
松村さん今回もありがとうございました。