板橋遊郭「遊女のガラス写真」の写真技術
板橋区立郷土資料館の企画展示に板橋遊郭に関して触れているコーナーがあって、そこに『遊女のガラス写真』というものが3点並べられていました。
展示解説には『店先に掲示していたものと思われます。』とあります。
ガラス板に現像された女性の姿に着色が施されているのですが、これがきれいなこときれいなこと。
しばらく上から横から、目を近づけたり離したりしてじっくり眺めていました。
そこで・・・。
あっ! と、思い出すことがありました。
『「張り店」と呼ばれる遊郭は、娼妓が品物のようにして遊客を待っていたが、これは娼妓自身の人権問題もありその他色々の事情から大正5年を境にして写真陳列に代えられた』「四谷警察署史」(警視庁四谷警察署発行・1976年)
つまり、これがその「顔見せ写真」ってやつでしょうか。
そして、もうひとつ引っ掛かることがありました。
なぜ、写真は、ガラス板に現像されているのでしょうか。
確かに、これに後ろから光を当てて掲示すれば、それはそれはきっと綺麗なことでしょう。でも、ほんとにそれだけの理由でしょうか?
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「ガラス写真」で検索すると、「ガラス乾板撮影」という写真技術に関する解説が上位に来ます。
フィルムが普及する以前は、ガラスに像を写してそれを現像していたのです。
そうか、これが今回のガラス写真というわけか!
と思いましたが、ガラス乾板に映るのはネガの画像です。
これをガラス板に現像したということでしょうか?
遊郭の写真掲示方法と写真技術の発展はどうリンクするのでしょうか?
これはこれは気になります。
引き続き、写真技術の歴史に関して調べてみると、このガラス写真の歴史にも、撮影直前にガラス板に感光液を塗って乾く前に現像する『湿板写真』から、感光膜が乾燥した状態で撮影でき現像もいつでも行うことができる『乾板写真』への変遷があります。
歴史的にみると、1900年頃には日本国内ではすでに乾板写真が普及していたようですが、今回の写真は、湿板写真でガラスに像を焼き付けてポジ画像を作るアンブロタイプという技法を使っているように思われます。
以下の動画と記事を参照願います。
●あかつき写房さんの湿板写真ワークショップの動画
●記事『坂本龍馬と同じ「160年前の技術」で写真を撮ってみた【田村写真】』
いかがでしょうか。
この手法で現像されたものに着色を施したのが今回のガラス写真ではないでしょうか。
【参考】イトウ寫真舘、ウィキペディア
PS.私のしつこい質問に丁寧にご対応いただきました岡崎写真館様に御礼申し上げます。