Led Zeppelin 1971年大阪公演音源新発掘に関する事実確認と希望的推察(2018.9.29.追記)
(2018.9.29.追記)
局所的に熱く話題になっているLed Zeppelin1971年9月29日大阪公演(通称「929」)の冒頭「Immigrant Song」のサウンドボード録音の発掘。
振り返りますこと2016年に、やはり突然に世に問われた、前日1971年9月28日大阪公演の「Black Dog」と並び、なんともこれはまさしく事件なのであります。
ZEPの初来日となった1971年の日本ツアーは、
9月23日 東京・日本武道館
9月24日 東京・日本武道館
9月27日 広島・広島市民体育館
9月28日 大阪・大阪フェスティバル・ホール
9月29日 大阪・大阪フェスティバル・ホール
の5日間でありました。
このライブ音源は、長年様々な録音ソース・・・主にいわゆるオーディエンス録音によってお馴染みでありました。特に名演とされた最終公演は、通称「929」の名で繰り返し地下リリースされてきました。
しかし・・・。
一体何故45年以上経って、PA直結のサウンドボード音源というソースが発掘されるのか? しかも1公演1曲ずつ・・・あまりにも不思議すぎるのです。
さて。
この1971年のツアーが公式に録音されていたというのは有名な話でありまして、定本「レッド・ツェッペリン:コンサートファイル」(デイヴ・ルイス共著・シンコーミュージック)でも次のように書かれています。
日本公演はすべて、アトランティックと契約している日本のレーベル、ワーナー・パイオニアからの強い要望でレコーディングされていた。グラントは、次のように語っている。
「サウンド・ボードはこんな小さな6トラックのソリッドステートのものだったね。ジミーは、それを少し気にしていたよ。そこでワシたちは、テープはすべて渡してもらう、そしてイギリスに持ち帰る、使用に関してはこちらの承認が必要、という条件をつけて録音させたんだ。そして、ジミーがそのテープを聴いてみたら、最低だったね。だから、テープは取り上げて消去し、別なことに使ってしまったよ。こうして『ライブ・イン・ジャパン』は幻となったんだ」
※文中のグラントとは、ピーター・グラントのことで、ZEPのマネージャー。
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また、来日当時レコード会社のZEP担当であった折田育造氏への2015年のインタビューには次のような発言がありました。
71年にツェッペリンが来日したときに、来日公演をレコーディングしたんだ。広島以外の全公演をね。それがリリースされなかった理由は簡単でさ、ペイジが音を聴いて“ワースト・レコーディング(最低の録音)”って言って、発売を許してくれなかったからだよ。自分の理想とする音じゃなかったんだろうね。そのあとのディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』がなんで出たかっていうと、エンジニアとして、かの有名なマーティン・バーチを呼んだら来たからだよ。音の良さにメンバーが納得してくれたんだ。
つまり、1971年の日本公演は録音がされていた(広島公演は除く?)ことは事実ということになります。
さて。
ここで折田氏の
それがリリースされなかった理由は簡単でさ、ペイジが音を聴いて“ワースト・レコーディング(最低の録音)”って言って、発売を許してくれなかったからだよ。
という発言が気になりました。
これはつまり、1971年当時にライブ音源のリリースの意図があっての録音であったということを意味しているのではないでしょうか。
「レッド・ツェッペリン:コンサートファイル」での「ワーナー・パイオニアからの強い要望でレコーディングされていた」という記述とも合致するようにも思えます。
また、真贋不明ですが、某匿名掲示板では2016年の「Black Dog」音源発掘当時、下記の書き込みがあったということです。
もともとBlack Dogはライブシングルの予定で、ジミーに許可をもらって
それに合わせて日本公演の写真でジャケを作ったのに、発売土壇場でスタジオテイクに差し替えられたのです。
こんな話は当時、一部のレコード会社関係者なら苦い思いで知っていることなのですが。
その音源が今回のものです。以上。終わり。
さて。
折田育造氏の発言に戻り、ディープ・パープルの「ライヴ・イン・ジャパン」に触れられていることに着目します。
ディープ・パープルの「ライヴ・イン・ジャパン」(「Made in Japan」)は、現在も聴き継がれるハードロックの名盤。
日本公演のライブアルバムが世界的にヒットしたというとチープ・トリック「チープ・トリック at 武道館」やシカゴ「ライヴ・イン・ジャパン」なんてのも思い浮かびますが、ディープ・パープルの「ライヴ・イン・ジャパン」はまさにそのはしりであったと言えるでしょう。
その制作の経緯は下記の記事に詳しいです。
http://www.tapthepop.net/live/37637
あとウィキペディアも。
このアルバムに向けて録音がされたのは、
1972年8月15日 大阪・大阪フェスティバル・ホール
1972年8月16日 大阪・大阪フェスティバル・ホール
1972年8月17日 東京・日本武道館
の3日間で、録音と発表を強く希望したのはワーナー・パイオニアでありました。
なんと、ライブ会場も日本のレーベルも1年前のZEPの事例と完全に一致するのです。これは、リリースが叶わなかった幻のLed Zeppelin「ライヴ・イン・ジャパン」へのリベンジであったと考えられないでしょうか。
パープル側は、ライブ録音に際して、以下の条件を課したそうです。
・リリースは日本のみ
・演奏、録音の状態が悪ければ発売しない
・録音はバンド側のスタッフが行う
・マスター・テープはバンド側が回収する
・ミックス作業はバンド側が行う
http://www.tapthepop.net/live/37637 より
そして結果パープル側も納得の良い音源が収録出来、わずか4ヶ月後の12月に日本でライヴ・イン・ジャパン」はリリースされました。
そして現在では「ライヴ・イン・ジャパン ’72完全版」として、全3公演のほぼすべての演奏を公式盤で聴くことが出来ます。
これを、今回のZEPの案件と照らし合わせてみます。
まず録音時の条件はピーター・グラントの
そこでワシたちは、テープはすべて渡してもらう、そしてイギリスに持ち帰る、使用に関してはこちらの承認が必要、という条件をつけて録音させたんだ。
という発言と共通と言えるでしょう。
また「テープは取り上げて消去し、別なことに使ってしまったよ。」の発言に関しては、音源の存在を詮索されることへの牽制と考えるのが自然のような気がします。
そして・・・。
今年、2018年はZEP結成50周年の節目の年となります。
昨年2017年11月19日に収録されたAmerican Academy of Achievementによるジミー・ペイジへのインタビューで、結成50周年を迎えることについて次のように発言しています。
「レッド・ツェッペリンの商品が出る予定なんだ。きっとみんなが聴いていないものなんだけどね。だって、僕は今それに取り組んでいるからね」
「来年は結成50周年だからね。ありとあらゆる驚くべきことが起こるよ」
※該当箇所は49分36秒から。
※報道記事 https://nme-jp.com/news/47886/
2018年も2ヶ月目に入った現時点。
新しい音源のリリースがアナウンスされているのは、2003年リリースのライブ盤「HOW THE WEST WAS WON」(1972年6月25日と27日のLAフォーラムとロング・ビーチ・アリーナでのライブ音源)のペイジによるリマスタリングです。
これを「みんなが聴いていない」「ありとあらゆる驚くべきこと」とするにはあまりにもの足りないお話でしょう。
そこで、ペイジの「みんなが聴いていない」「ありとあらゆる驚くべきこと」という発言と、今回の音源発掘には何らかのリンクがあると想像することは、決して不自然ではない気がするのです。
さて。
改めて2016年発掘の「Black Dog」と今回の「Immigrant Song」を聴き返してみます。
前者は演奏後のプラントのMCを経て「Dazed And Confused」のイントロで、後者は演奏後間髪入れずの「Heartbreaker」のど頭で一気にフェイド・アウトします。次の曲へのフェードアウトがあまりにいやらしすぎます。
「ふふふ・・・続きもあるでよ。でも、まずは1曲だけね。」
と、不敵にニヤリと笑う、誰かのメッセージが聞こえて来るように感じます。
これは、極上音源をふところに秘めたブートレガーからのメッセージなのでしょうか。
いや、どうも私には結成50周年記念の年に投下された、ペイジからの予告のように思われて仕方がないのです。
2018年。
これは、今年きっと何かが起こるのではないでしょうか。
【追記】(2018.2.15.)
ZEP情報サイト「Led Zeppelin News」の2018年2月14日付の記事によると、ジミー・ペイジは、英国の音楽誌「Planet Rock」2018年2月16日発売号でのインタビューで、今年Led Zeppelinが「How The West Was Won」「The Song Remains The Same」に続く、新しいライブアルバムをリリースする予定であると発言したとのこと。
また「他にも今後10年間でさらに多くのリリースが予定」とも発言。
この「Planet Rock」誌でのペイジのインタビューに関しては、音楽情報サイト「Music Week」が詳細に伝えています。
“I can’t give the game away,” Page said, “but there’s a recording that’s another multi-track that we’ll release. It’s so different to all the other things that are out there. It’s another view compared to How The West Was Won or The Song Remains The Same. I’m looking forward to people hearing that.”
このタイミングでこの報道とペイジの発言。
これは、いよいよナニがナニしてアレして行くのでしょうか。
ドキドキして来ました。
【追記】(2018.3.21.)
ここのところ続々明らかになってきた感のある1971年日本公演のマルチトラックでの録音の事実。
音楽誌「ロッキング・オン」2018年4月号掲載の「ジミー・ペイジへの17の質問」は、2014年に取材された記事。この中でペイジは次のように答えています。
●71年の日本ツアーの時のマルチ・トラック音源は残ってないんですか(イアン・コー)
「あるかもしれないね。でも。今表に出せるものはないよ。レッド・ツェッペリンの素材については、ライヴを含めてたくさん発掘されてるんだけど、特に映像面で重要なものが出てきてるよ。」
(ここでも読めます)
これは暗に音源の存在を認めていると受け止めてよいでしょう。
また、2018年3月に日本版が発表された研究本、「レッド・ツェッペリン 全活動記録 1968-2007」(マーク・ロバーティ (著)/前 むつみ (翻訳)/シンコーミュージック・刊)には、
ワーナー・パイオニア・ジャパンが本ステージを8トラックで録音。「How The West Was Won」の対になる「How The Eest Was Won」の発売を検討したが、いまだに発表されていない
と1971年の初来日公演5公演の内、9月27日の広島・広島県体育館公演をのぞいた、9月23日、24日の東京・武道館公演、9月28日、29日の大阪フェスティバル・ホール公演が8トラックで録音され、リリースの検討までされていたとはっきり書かれています(P117〜119)。
ん!?
あ。
結成50周年のメモリアルイヤーである今年、「どんな新音源リリースが!?」とワクワクする中でアナウンスされたのが2003年リリースのライブ盤「How The West Was Won」のリマスタリングで、少々肩透かしを食らった感がありました。
しかし、これが対となる日本公演のライブ盤「How The Eest Was Won」を今年リリースする符号なのだとしたらガッテンいくのでは?!
こいつはすごいぞー。
【追記】(2018.3.31.)
「929」サウンドボード音源。
地下市場にて、「天国への階段」と「Friends」も出てきた!
BFに本日入荷。Led Zeppelin"天国への階段"(1971/9/29 大阪 1CD EVSD):超高音質のSBDシリーズ第2弾。第1弾の"移民の歌"の外封筒を郵送又は店頭で引き換えに"Friends"が貰えるそうです。 pic.twitter.com/0DV7vbymPe
— 70’s ROCK大好き親父 (@yuminori0616) 2018年3月30日
【追記】(2018.4.5.)
突然アナウンスされた「移民の歌」購入者特典CDの929サウンドボード録音「Friends」を頂戴しに西新宿へ。
出たばかりの929サウンドボード「天国への階段」1曲5400円の購入は今はぐっと我慢。
いやすごいな1曲ずつ小出し商法。楽しいぞ。
店長に
「やはり全曲音源あるんですか?」
と聞いたら
「いや、僕らは販売してるだけなんでわかりません。」
とはぐらかされてしまいました。
知らないわけはありませんよね。でもそりゃそう言うか。
帰宅後「Friends」を聴く。
すげぇ・・・。これライブ全収録であるのか・・・。
それを聴くためにもオレは生きる。正しく生きる。
【追記】(2018.9.29.)
そしてそして。
私たちはこの日を迎えました。
Led Zeppelin「929」:「How The East Was Won」リリース所感
素晴らしい考察読ませて戴きました。ありがとうございますm(_ _)m