1973年のポールのビートルズ再結成発言
数週間前、別な調べ物をしていて見つけた1973年5月10日付報知新聞の記事。
元ビートルズのポール・マッカートニーは8日ロンドンでタブロイド新聞”サン”とのインタビューの中で「私とビートルズの元の3人は一緒にプレーするつもりだ」と語った。マッカートニーによると、ビートルズ4人が集まって、1、2度一緒にやってみることを決め、そのあとカムバックすることになろう。
ほぼ同内容のものが同日日刊スポーツにも載っていました。
「この時期何があったんだろう」
「ホントにポールはこんなこと言ったのかな」
と気になって机の上にずっと置いておいたところ、
「3人とプレーOK」
のその見出しに家人から
「まぁ、いやらしい記事を大切に取っておいているのね」
と豊かな想像力を発揮され、いやいやそうではなくて・・・ではではちょっと調べてみようかと思った次第。
そもそも英国のタブロイド新聞「Sun」の記事ということで、日本で言えば「夕刊フジ」か東スポの記事という感じで捉えればよいのでしょうか。
ビートルズが復活するのではないかという憶測は、グループのドラマーだったリンゴ・スターがマッカートニー、ジョージ・ハリソン、ジョン・レノンの3人に、新しいアルバムのために一緒に1曲をレコーディングしてもらったことが数週間前明らかになって以来流れていたもの。
【スポンサードリンク】
これはリンゴが1973年11月に発表したアルバム「RINGO」のことでしょう。
ビートルズの3人が参加したアルバムとして大変話題になったもので、内容もリンゴの最高傑作の1枚でしょう。
私も大好きなアルバムです。
しかし、この記事の「一緒に1曲をレコーディングしてもらった」というのは事実に反します。
「RINGO」収録曲のビートルズ・メンバー参加曲をレコーディング・クレジットから以下にまとめます。
・I’m the Greatest
ジョンの提供曲。ジョンがピアノとコーラスで、ジョージがギターで参加。
・Photograph
ジョージとリンゴの共作曲。ジョージが12弦アコギとコーラスで参加。
・Sunshine Life for Me (Sail Away Raymond)
ジョージの提供曲。ジョージがギターとバックボーカルで参加。
・You’re Sixteen
ポールがマウス・サックス・ソロ(サックスの口真似ソロ)で参加。
・Six O’Clock
ポールとリンダによる提供曲。ポールがピアノとシンセサイザー、バックボーカル、ストリングスとフルートアレンジで参加。
・You and Me (Babe)
ジョージとマル・エヴァンス(!)による提供曲。ジョージがギターで参加。
かろうじて「I’m the Greatest」が3/4ビートルが実現していますが、「一緒に1曲をレコーディングしてもらった」という事実はありません。
ビートルズ解散直後の「ポール対3人」という対立緊張関係が、リンゴという媒介を介してでも、まだ続いていたことが察せられます。
また、一方で視点を変えると、この時期ビートルズのベスト盤の通称「赤盤」「青盤」がリリースされたばかりで、日本では5月20日にオリコン・チャートの1位・2位を独占したという史実もあります。
ベスト盤リリースでビートルズ再評価を盛り上げるため英国タブロイド紙の記事を引いた販促活動なのか、ホントにポールがこのような発言をした何か背景があったのか、単なるポールの天然なのか・・・もう少し勉強してみたいと思います。