【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 続報編:写真発掘の衝撃!
(title design/S.Takei)
さて。あれから約1年・・・。
ポール・マッカートニーの来日公演を直前に控えた何というタイミングでありましょうか。
昨年、来日から50周年を迎えたビートルズ。
そんな中、私は「日本滞在中に、ポールがホテルを抜け出して行こうとして叶わなかったトルコ風呂」を「【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史」というシリーズで追い掛けました。
結論として、それ・・・トルコ「大木戸」は確かに存在しました。
かつて花街として栄えた四谷大木戸に戦前からあった老舗料理屋「自慢荘」。2つの棟が渡り廊下で繋がる純和風建築の後ろの棟に、1962年(昭和37年)トルコ「大木戸」は作られました。
芸能人、著名人などもお忍びで通う、知る人ぞ知るお店として、1984年(昭和59年)の「トルコ」名称問題と改名を経てソープランド「大木戸」は1995年2月末まで営業を続けました。
1966年(昭和41年)に調査したであろう住宅地図「全住宅案内地図帳 昭和42年度版」(住宅協会地図部・1967年7月1日発行)で確認します。
(赤丸で囲んであるのは現在も営業を続ける料理屋「多満川」)
そしてこれが四谷四丁目町会様からご提供いただいた「自慢荘」とトルコ「大木戸」が見られる1977年撮影の航空写真です。
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新宿歴史博物館所蔵の1964年(昭和39年)9月25日に撮影された写真からは、四谷大木戸の交差点(四谷四丁目交差点)にあったトルコ「大木戸」の看板を発見しました。
新宿歴史博物館所蔵・1964年(昭和39年)9月25日撮影
新宿歴史博物館所蔵・1964年(昭和39年)9月25日撮影
次に、ビートルズが宿泊した東京ヒルトンホテル(現:ザ・キャピトルホテル 東急/東京都千代田区永田町二丁目)とトルコ「大木戸」の位置関係を見てみます。
車で10分ほどの近距離であることが確認出来ます。
(google mapより作成)
というわけで、「裏ビートルズ来日学」を通じて、トルコ「大木戸」の存在確認と、数々の証言による外観、内装構造までを理解することができました。
しかし・・・・。
残念ながら、力及ばず。
トルコ「大木戸」の姿を、これ以上の写真や映像で見ることは、最後までかなわなかったのです。
さてさて・・・。
それは、突然「煙突@大木戸」の件名で、見知らぬ方から届いたメールから始まりました。
開けばそこには、目を疑う店名の描かれた看板の見えるある風景が。
「・・・ん? ん? えーー?!」
電車での移動中、思わず声をあげていまいました。
約1年前、熱病に掛かったように夢中で追い求めていた風景。
それがいきなり目に飛び込んで来たのです。
(「はぐれ刑事純情派 PART 2」 第21話「過去を盗んだ男」(東映製作/テレビ朝日・1989年8月23日放送)より)
メールの主は匿名希望都内在住のI様。
この写真は1989年8月23日にテレビ朝日で放送された連続ドラマ「はぐれ刑事純情派 PART 2」 第21話「過去を盗んだ男」(東映製作)から。
2017年4月18日にBS朝日で再放送されたテレビ画面をI様が撮影されたものであります。
奥に「自慢荘」が見えます。
「ソープランド大木戸」と記された看板があります。
そして、この調査の初期から議論になった黒くすすけた煙突があります。
そして、この写真はしばらく前にとりあげた1989年7月撮影の航空写真。
(「内藤新宿の町並とその歴史」(編集 東京都新宿区立新宿歴史博物館・発行 新宿区教育委員会・平成3年3月発行)の冒頭「口絵1 大木戸方面から高層ビルを望む(空中写真1989年7月撮影)」)
今回の写真と同時期ものです。これが「大木戸」を正面からとらえた写真です。赤丸が「大木戸」、赤の四角のひとつ前のビルが「多満川」です。
そして、ここで1989年に調査したであろう「ゼンリン住宅地図 新宿区」1990年版を掲載します。
今回の写真を四谷大木戸の若証人「多満川」のご主人、柳谷様にご覧になっていただいたところ
「この写真はウチのビルの非常階段か、屋上からから撮った写真と思われます。」
との発言が得られました。
さらに
「そういえば、その頃、テレビの撮影でザ・ぼんちのおさむ氏が店に来たことがありました。それがこれなのかな?」
という証言も。
まさしく、これはビンゴでしょう!
ぼんちおさむ氏は「はぐれ刑事純情派」の第1シリーズから長きに渡って出演しています。
「多満川」はこの時、撮影に協力していたことが裏付けられました。
そんなわけで、地図に赤で「多満川」からの撮影方向を記しました。
1989年撮影の今回の写真と航空写真、そして住宅地図から、ソープランド「大木戸」前の外苑西通り沿いは、建設工事中であったことが確認できます。
散々悩ませられた、1980〜90年代に
「トルコ『大木戸』には煙突があって、それが印象に残っている。」
という複数の方の証言もガッテンがいきました。
この建設工事ののち、現在の高い建物が建てられるまでは、「大木戸」の前には低い建物しかなかったわけで。
で、しかもこの辺りは、土地に大きな高低差があるので、低い位置に当たる外苑西通り側からは、ソープランド「大木戸」と書かれた袖看板と、黒くすすけた煙突がはっきりと見えたであろうことが察せられます。
そして、
「煙突に『トルコ』(または『ソープランド』)と書いてあった」
という証言も、この背の高い袖看板の印象と混じったものと考えられるのではないでしょうか。
そして。
正直一番ひっくり返ったのは、「多満川」ご主人柳谷様に描いていただいたトルコ「大木戸」の外観のイラストとのあまりの一致であります。
(説明加筆入り)
(様々な証言をもとに煙突位置を著者修正)
柳谷様は実際にトルコ「大木戸」の姿、内装をご覧になっているわけで当たり前と言えば当たり前なのですが、それがこうして写真で見られる衝撃といったら・・・。
「大木戸の入り口がふたつ写っていますね。手前がソープの入り口です。」(多満川 柳谷様)
(「はぐれ刑事純情派 PART 2」 第21話「過去を盗んだ男」(東映製作/テレビ朝日・1989年8月23日放送)より)
「自慢荘」の2棟を結ぶ渡り廊下辺りにあった勝手口と、その手前にトルコ「大木戸」の入り口が確かに確認できます。
次に、反対の方向から、おそらくホテル新御苑から撮影されたと思われる(多満川 柳谷様も証言)写真を。地図で位置を確認します。
(「ゼンリン住宅地図 新宿区」1990年版)
(「はぐれ刑事純情派 PART 2」 第21話「過去を盗んだ男」(東映製作/テレビ朝日・1989年8月23日放送)より)
袖看板の「ソープランド」の「ソ」の文字の上に「デラックス」の文字が確認出来ます。
おおよそ特殊浴場のイメージにそぐわない、なかなか煩悩がそそられない濃い緑地に白抜きの文字。
そこに「サービス」なのか、それとも「設備」なのかに掛かる「デラックス」という強調表現。
「デラックス ソープランド大木戸」
「デラックス ソープランド大木戸」
「デラックス ソープランド大木戸」
嗚呼何とも微笑ましくも愛おしい。
さて。
これも復習となりますが、もうひとつのアングルも確認しておきましょう。
(俳優さんなど人物はぼかす処理をさせていただきました。画像処理:ブラン竹井メンバー)
この写真は、ここやここで検証した1981年に撮影されたドラマ「太陽にほえろ!」(製作・著作:東宝株式会社/制作:日本テレビ)のロケ写真です。
ご提供いただいたのは、四谷四丁目ホームページ委員会 小林様(四谷大木戸 藪蕎麦 ご主人)。氏が幼少の頃に撮影したものです。
地図で位置を確認するとこうなります。
(「ゼンリン住宅地図 新宿区」1990年版)
料理屋「自慢荘」の入り口、看板、周辺の様子を見ることができます。
ついに私たちは、ここまで立体的かつ多角度的に「大木戸」周辺の姿を目にすることが出来るようになったのであります!
看板こそ「デラックス ソープランド大木戸」と新しいものに変わっていますが、瓦屋根の純日本建築の建物は、1966年当時とほぼ変わらない姿のまま経年変化したものと察せられます。
そして、トルコ「大木戸」の周辺の雰囲気は、かつて得た証言を裏付けるものだと言えるでしょう。
入り口横の看板も、袖看板も光らないものでした。光るものをいえば、入り口が明るかったぐらいじゃないかな。知ってる人しか来ないという感じだったから。(多満川 柳谷様)
1980年代に四谷荒木町に事務所を構えていたという編集者のWさんからは、次のような証言をいただきました。ご了承を得て掲載させていただきます。
当時、荒木町から新宿まで歩くことの多かった中で、偶然見かけたのが大木戸のトルコ風呂でした。新宿ニ丁目からも離れ、当時でも貸しビル街といった地味な趣の街並みの中、「なぜ1軒だけぽつんと風俗店があるのか」と不思議に思いました。
当時でも古めかしい門構えだった記憶が微かにあります。
その頃は当方も性風俗につき現役バリバリでしたが、入店しようという気にはまずならない中高年の店という趣でした。微かな記憶で合っているかどうか自信ないのですが、入口に暖簾がかかっていたかのような・・・。
もし、性風俗に詳しくない方に解説するなら、今や見かけることも少なくなった、麻雀牌など質流れ品を店頭に置く質屋のような、ひそやかで裏ぶれた雰囲気を醸し出していました。
ひしゃくを持ち半纏を着た店員さんが表で水を撒いていたような・・・これも自信ありませんが、微かに記憶の片隅にございます。
当時、性風俗的にはマンショントルコ、ホテトルなどが出現した時期で、トルコ風呂自体が古めかしいものと扱われていました。若者が好んで赴く風俗ではなかったです。若者(当時当方20代前半)お断りといった雰囲気だったような・・・。
「中高年の店」
「ひそやかで裏ぶれた雰囲気」
「若者お断りといった雰囲気」
まさにこの証言は、今回の写真を裏付けるもので、かつてここで取り上げた、匿名掲示板で語られていたトルコ「大木戸」の記憶
5 :名無しさん@入浴中:02/03/13 12:31
大木戸・・・・。
懐かしい・・・。
ホテル本陣の側だよね。
着物姿が懐かしい・・・。
10 :special love:02/03/13 20:57
個室サウナ 大木戸…今はもう無いんだ
夕方行くとタイムサービスで安かった。
個室に入ると赤い壁に赤い絨毯。ベットがあって岩風呂風のお風呂があった…
36 :名無しさん@入浴中:02/06/02 18:39
懐かしい店名だな。
そう半地下のお店で小さな部屋が向かい合ってて、
女郎屋を思わせるような淫靡な造りだったね。
37 :名無しさん@入浴中:02/06/02 18:42
遊郭の香りのする所だったね。
と繋がり、重なるものであります。
(内装に関しては、ここで推察と検証をしました。)
いかがでしたでしょうか。
これが、1966年にビートルズのローディ、マル・エヴァンスが訪れた場所にして、ポール・マッカートニーが訪問を熱望しつつもかなわなかった場所、トルコ「大木戸」の姿であります。
そんなわけで。
シリーズの総集編のようになってしまいました。
すごいなぁ・・・まさかこんな写真が見れる日が来るなんて。
今回のお写真をご提供下さりましたI様に心より感謝申し上げます。
そして、もしよろしければ、この機会にこのタイムトラベルを最初からご一緒いただけましたら幸いです。