殴り書き読後覚書:橘川幸夫「ロッキング・オンの時代」
橘川幸夫「ロッキング・オンの時代」(晶文社)読了。
橘川さんのnoteでの連載を楽しみにしていたので、ついにこうして1冊にまとまって読めるのがとてもうれしいです。
1972年の「ロッキング・オン」創刊から約10年間のお話。(「ロッキング・オン」は私と同い年なのね。)
新宿ソウルイートでの渋谷陽一との出会いや、印刷業を営んでいた橘川さんのお父さんの協力で創刊時からオフセット印刷で出版していた話。盟友渋谷陽一、橘川幸夫、岩谷宏、松村雄策の4人の関係性。なかなか商業的に軌道に乗らない中での試行錯誤などなど。
断片的に、昔話として渋谷陽一や松村雄策から誇張して語られることでしか知り得なかったエピソードが、真実の記述として描かれるのワクワク感といったらありませんでした。
私は橘川、岩谷在籍時の「ロッキング・オン」はリアルタイムでは読んでいません。
(でも80年代末頃も岩谷さんの原稿載ってなかったっけ?
古本屋でバックナンバー買って読んだのと勘違いしてるのかな・・・。)
でも「ロッキング・オン」の創刊時の意思も、こちらも私よりはちょっと上の世代の方に思い入れが強い橘川さんが作った投稿雑誌「ポンプ」も、私が1990年代半ばにウェブメディアにとてつもない興奮を覚えたのと共通のものを感じました(おこがましいですが・・・)。
橘川さんの双方向性だったり参加型のメディアへのこだわりというのがよくわかりました。
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最近の橘川さんのインタビューでも、まさにそんなことが語られています。
[リンク:「ロックはミニコミ」早過ぎるインターネット作った橘川幸夫が語る]
あと、橘川さんの生まれ育った四ツ谷の1970年代の風景や空気感がたくさん描かれているのも刺激的でした。
橘川さんが、岩谷さんと同時期に「ロッキング・オン」編集部を去ろうとするのが、増井修の入社(1980年)と重なるのが実に象徴的でした。
私が最も「ロッキング・オン」に熱量を持って接していたのは、1990年前後。まさに増井修政権の時代でした。
編集部と読者が一心同体のような同人誌かつサークルのような媒体から、音楽誌トップに君臨するまでの発展、そしてその後の雑誌乱発時代、そして現在の多数のイベント運営まで手掛ける大事業体に至る原点が描かれています。
今年5月に増井修「ロッキング・オン天国」(イースト・プレス)
が出て、そして今回の橘川さんの本。
2016年は何ゆえ「ロッキング・オン」史が解禁となったのでしょうか?
「クイック・ジャパン」の連載をまとめた篠原章「日本ロック雑誌クロニクル」(太田出版・2004年刊)
と合わせて、この3冊をもう一度読み返したいです。