【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その14
(title design/S.Takei)
最終章第2回。
もちろん引き続き、料理屋「多満川」のご主人柳谷治様からお話をおうかがいします。
どんどんトルコ「大木戸」が、その具体的な姿を見せて来ます。
——- 建物の構造に関して少しずつおうかがいして行きたいのですが、四谷四丁目町会様からご提供いただいた1977年の空撮写真(シリーズ「その7」で検証しました。)を見ると、割烹「自慢荘」とトルコ「大木戸」の2つの建物が渡り廊下のようなもので繋がっているように見えるのですが・・・。
[柳谷様] そうです。繋がっていたんです。僕が描いた絵のここ(下記イラストに図示。以下同。)が渡り廊下のつもりなんです。表玄関がこっちで、前の建物が座敷だった。で、ここに木戸があって、丁度渡り廊下の辺りに位置していました。その奥に勝手口があったんです。
そして、後ろの建物に居宅と調理場がありました。
調理場から料理をこの渡り廊下をを渡って座敷へ運ぶわけです。
どうです? 疑問は解決しましたか?
【スポンサードリンク】——- え!? 後ろの建物は全てトルコ「大木戸」ではなかったんですか? 後ろの建物に居宅と調理場があったというのには驚きました。
[柳谷様] 僕も、はじめはあなたの文章を読んでいて、「そういえば何でだろう?」と思ったんです。
・・・それで、あの辺りを散歩して眺めたら「そういうことだったか!」としっかり記憶が蘇って来たんです。[柳谷様] そして、ここに僕の目には写っているように見えるんだけれど、この、ぼやっと色が変わっているところが(上の写真に図示)トルコ「大木戸」の入り口ですね。
(2棟の前の方の建物には)大きな座敷なんかもあったんだと思います。でもこっちには僕は入ったことがないんです。
ただ「自慢荘」さんと同じ組合だったので、1990年代かな・・・僕が衛生組合長をやってまして、その時に知らせを持って行ったり、集金に行ったりとよくこの木戸からおうかがいしました。
——- 座敷側と渡り廊下を渡って、トルコ「大木戸」にも繋がっていて、お客さんが建物の中からトルコ「大木戸」に行けたりなんてことは・・?
[柳谷様] それはないと思うんですけどね。ただこの距離なので、入り口が別にあったとして不思議ではないですよね。後ろの建物から地下に入れたりとか・・・。正確なことはちょっとわからないですけれども・・・。
——- 「お忍びで使われた」というは、その辺のことがあった可能性も感じるのですが。
[柳谷様] お忍びね・・・ちょっと聞いただけでも東京、京都の芸能関係の方がたくさん来てたみたいですね。結構大御所どころの俳優さんや、有名な作曲家などたくさん話を聞きました。
[柳谷様の弟様] 小沢昭一はトルコ「大木戸」にかなりはまってたんだよ。それで「トルコ行進曲」って歌まで出した(※1)。
あの人はトルコ巡りをやってたもんね。[柳谷様] あとねぇ、当時のある人気相撲取りが来た時は、さすがに目立っちゃって、あの辺りが大騒ぎになったことがありました。
そう考えると、みんなトルコ「大木戸」の入り口で目撃されているわけだから、料理屋と繋がっていたとか、別な入り口があったとかは、ないように思いますね。
※1:小沢昭一がトルコ「大木戸」にどれほど頻繁に通っていたのか、また「トルコ行進曲」とトルコ「大木戸」の関連性は不明です。
「土耳古行進曲」は作詞・作曲 加藤登紀子、編曲 佐々永治。
しかし、ずっと2棟はそれぞれ割烹「自慢荘」とトルコ「大木戸」と分かれているとばかり思っていたのに、後ろ側の建物が、割烹「自慢荘」の調理場兼居宅だったとは・・・。
いやぁ、びっくりいたしました。
では一体地下にあったというトルコ「大木戸」はどんな構造になっていたのでしょうか?
最終章、もう少し続きます。
ご厚意に甘えまして、柳谷さんの追加取材もさせていただけることになりました。
とことんやりますよ。
→続き:【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その15
[追記]
念のため書いておきますが、この文章にポール・マッカートニーに対する悪意などの他意は一切ありませんし、1966年の来日時に「ポールがトルコ風呂に行こうとしてそれがかなわなかった」ということが100%事実である裏付けは私には取れておりません。文中の書籍での記述や、証言者の発言から、それが事実だと想定してのフィールドワークです。また、文中の取材先などの表記や画像の掲載、表現に問題がございましたらご指摘ください。
そして、これは、飽くまで本家「ビートルズ来日学」宮永正隆さんの長年の緻密で執拗なインタビューと検証への最大限の敬意がまずはじめにあっての、そこでちらっと見えた連載や書籍ではやりづらいかもしれない「スキマ」への好奇心が発端の取り組みです。
(わざわざ言うのも無粋ですね)