【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その11
(title design/S.Takei)
少し前にご紹介した、四谷四丁目町会 ホームページ委員会 小林辰充様(四谷大木戸 藪蕎麦 ご主人)からご提供いただいた、「トルコ大木戸」と並んで建っていた「割烹 自慢荘」の入り口がはっきりと写る、1981年の「太陽にほえろ!」ロケ写真の検証報告です。
あれからすぐに「太陽にほえろ!」研究サイトを当たったり、管理人の方に問合せをしたりして、はじめは
「結構スムースに放送回を特定出来るのでは?」
という感触を持っておったのですが、しかしこれが実に難航。
ロッキーとドックの出演がかぶると思われるのは、第415話〜第519話。
1981年の放送は第439話〜第519話の内の全80話に絞られるだろうというところまでは行けたのですが、どうしてもその先が進まない。
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「80話くらいなら見てやろうじゃないか。」
と思ったものの、「太陽にほえろ!」のDVDはレンタルに出ていないし、各種映像オンデマンド配信サービスにも乗ってない。
事実上、VAPから出ているDVDボックスで観るしか、「観たい時に観る」手段がないことがわかりました。
本DVDボックスの国会図書館での所蔵が確認出来たものの、1日に閲覧できるDVDの本数は3本。DVD1本に4話収録されているので、80タイトル見るためには・・・80÷4÷3=6あまり2・・・つまり7回も永田町に通わなければならない計算になります。
「だったらDVDボックス買っちまおうか。」
という衝動にも駆られたのですが、1981年放送分は2つの箱に分かれていて、全部買うと6万円超えです。
さすがにこれでは道楽の度が過ぎます。
「この検証に深入りするのはやめようか・・・。」
そんな思いにもなっていた中、「『太陽にほえろ!』当直室 仮設日誌」というサイトにぶつかりました。「ロケ地検索&メモ」というシリーズで、1話1話の感想とロケ地のメモが記載されているのです。
「これだ!!」
と、四谷四丁目が関係する回を検索し、おおよそ2〜3話を「確認優先順位の高い回」として当たりをつけました。
これなら1日に閲覧できるDVDの本数が3本の国会図書館に検証に行く価値ありです。
そして、少し相談に乗っていただいたFacebookページ「太陽にほえろ!」の管理人様(心より感謝申し上げます)より、
「当時、太陽にほえろは撮影自体4話掛け持ち撮影だったので衣装が同じという事で絞り込める。・・・という事が言えます。」
というアドバイスを頂戴しておりました。
つまり、最大3話の優先順位で、DVD1枚4話収録なので、前後の回も要確認で3本で12話見ることでより当たる確率が、高まるということですね。
そんな訳で、いざ国会図書館へ。
DVD閲覧ブースで、ひたすら作品のストーリーはまったく追わず、「ここか!?」と思うところ以外は、早送りで画面を凝視します。
気になるシーンは何度もコマ送りや一時停止、巻き戻しを繰り返して、お店の名前や地名に関係する記載を探します。
当たり前の話ですが、ドラマの映像は人物を中心に追うので、背景に見たいものがあっても、なかなかピントを合わせてくれないし、寄って行ってくれない。
いやぁ、もどかしいこともどかしいこと。
3タイトル観るのに恐ろしく時間が掛かりました。
さて・・・。そんなわけで、見つけました。
まずは、「太陽にほえろ! 1981 DVD-BOX II」収録の
第465話「裏の裏」(1981年7月10日放送)。
まず、ひとつ前の回、第464話収録の次週予告を見て、「ぴーーん!」と来ました。
ロケ写真と、ドック、ロッキーの衣装が完全に一致しているのです。
出てきたのはこんなシーンです。
(ホントは画面キャプチャでも載せたいところですが、さすがにそれは気が引けますし、そもそも国会図書館でキャプチャ撮るのは無理。・・・ということで、苦肉の策。法廷画風に(?)トレースしたイラストと文章での解説でご勘弁を。)
・・・少し遠目の位置からのカメラ。
小さな坂道を登って来るようにロッキーとドックが上半身から少しずつ姿を現す。捜査に行き詰まる中、語りながら考えを巡らすドック。
左側の電柱の上部に看板がある。
筆文字で「◯◯本店」と読める。
そして「パーティー、◯◯(割烹?土鍋?)料理」の文字、電話番号は下4桁「(多分)3831」が確認出来る。
そして、お店の位置を示す赤い矢印は右側を示している。「◯◯本店」の「本」の上のもう一文字を確認したい。
偏(へん)と旁(つくり)に分かれている漢字であることは確認出来る。
「自慢」の「慢」の「曼」に見えなくもないが、断定できず。続いてドックは立ち止まり、語り続ける。
右手後方にガソリンスタンドの看板が。
いちじくを横にしたような青の太いライン、いちじくのお腹の部分に大きな赤丸のロゴ。このロゴだ。
※JX日鉱日石エネルギー 新しいENEOS誕生までのあゆみより
見覚えがあるロゴ・・・共同石油(現・JX日鉱日石エネルギー株式会社、石油事業ブランドは「ENEOS」)だ。
次にカメラは左側からドックのアップ。
背後は瓦屋根の日本家屋は2軒? 間に低い木の緑が見える。
瓦屋根越し後ろに白い高い建物が。縦長の窓に特徴がある。続いてドックは、今カメラがいた左側の方向へ、腕組みをしながら移動をする。
左側の道の端には駐車禁止の標識が。
その辺りがゴミ集積場なのだろう。その標識にオレンジ色の板が括りつけられていて、手書きで
「指定日以外 ゴミを捨て(おそらく→)禁止」
の文字と下に白い矢印のようなものが貼られているのが、確認出来る。
そこからまっすぐ歩みを進めるドック。
「大木戸産業株式会社」と社名が書かれた少々汚れたブロック塀が。
そこから先は下り坂となっていて、車通りの多い大通りへとぶつかる。「そうかわかったぞ!」と、捜査のひらめきを得るドック。
そして、大通りへ向かって坂を走って降りていく。
右手に「朝日屋」というお店の入り口の看板と、その先の電柱に大きく「大和通信建設」の文字が確認できる。
反対側から少々呆れ気味のロッキーの姿。背後には先程のゴミ集積場近くの道路標識と、2人が登場した時に見えた電柱が遠くに見える。
つまり、このシーンは一本のまっすぐの道で収録されたということがわかります。
さぁ。ではでは答え合わせです!
では、1982年のゼンリン住宅地図を見てます。
そして、四谷四丁目町会 ホームページ委員会 小林辰充様(四谷大木戸 藪蕎麦 ご主人)からご提供いただいたロケ写真を見てみましょう。
じゃじゃーーん!!
地図と写真から
・共同石油
・民家と割烹自慢荘、間の緑の木、後ろの特徴的な窓のある高い建物
・自慢荘の向かい側のゴミ集積場にある駐車禁止の標識と「指定日以外 ゴミを捨て(おそらく→)禁止」のオレンジ色の板
・外苑西通りに出る坂道の「大木戸産業株式会社」「朝日屋」「大木戸産業株式会社」
が一致することがわかります。
そして自慢本店の看板の真偽こそ判断できないけれど、矢印の方角は当たっています。
また、写真で見られるゴミ入れの缶に「朝日」と書かれてるのは何故!?
という疑問も「朝日屋」のものだったということで繋がりました。
完全ビンゴです。間違いないでしょう。
現在の風景はこちら。
後ろを振り返ると、右に「ENEOS」のガソリンスタンド、左に電柱・・・基本変わってないのにびっくり。
さて。
続いて、四谷四丁目町会 ホームページ委員会 小林辰充様(四谷大木戸 藪蕎麦 ご主人)の証言
確か、ウチの建物の上から旧サンミュージック前の人物に向かって犯人が狙撃するようなシーンも撮ったと思います。
道端に撮影に使うための血糊の入った瓶が何本も並べてあったのを覚えています。
の検証です。
それは、続く
第466話「ひとりぼっちの死」(1981年7月17日放送)
ですぐに見つけることができました。
こんなシーンです。
四谷四丁目の交差点。
小林ビルの全景が映されます。
合わせて現在見えるこの景色を見てみましょう。
※googleストリートビューで確認 交差点角に長年あったガソリンスタンドから小林ビルまで、まったく高い建物がなかったのですね。
シェル石油の隣に、大きく3文字の筆文字の看板がある低い建物が見えます。
小林ビルは、ほぼほぼ、現在から姿を変えていないようですが、1階〜3階の外観は当時は白色だったのですね。
縦に通るエレベータ? 階段? 部分も白色で、現在の全体が黒い印象とは異なっています。隣りの写真館のある4〜5階建ての建物は何ひとつ変わっていないことがわかります。
その写真館のある建物に付いているのか、その隣りなのかわかりませんが、塗料メーカー「ロック・ペイント」の看板が確認できます。
次にシーンは、小林ビルの屋上から。
交差点のサンミュージックのあった大木戸ビル方面を狙うライフルの先。
うん、そういえば、今は白っぽい建物だけれど、昔は確かにれんが色っぽかった。
大木戸ビルの新宿方面に向かった隣り、今宇宙村や、喫茶店、お蕎麦さんが並ぶ第1シンコウビルは、まだ建築前なのか廃墟のように見える。
そして、大木戸ビルの反対側の隣り、吉岡ビルの入り口がアップに。
この辺は、隣の文房具店といい、まったく変わってない。吉岡ビルから出てきた男がライフルで狙撃される。
交差点の歩道は大混乱。
現在の風景はこちら。
※googleストリートビューで確認
ゴリさんは、ライフルを撃った場所を探しに動き始める。
横断歩道を四谷三丁目側へ渡る。
この辺も歩道に車が数台停まってたり、まだ全然栄えていない様子。
現在の風景はこちら。
※googleストリートビューで確認 そして、さらに横断歩道を渡り、ゴリさんは小林ビルへ。
1階の蕎麦屋の(四谷大木戸 藪蕎麦)の扉に手を掛けた時、怪しい男が四谷三丁目方面から歩いてくるのに気づく。
ゴリさん越しに画面いっぱいに映る「四谷大木戸 藪蕎麦」。
怪しい男は新宿方面へ歩いて行く。
追いかけて声を掛けるゴリさん。
その後ろにずっと「四谷大木戸 藪蕎麦」の入り口が。
(この辺りは、撮影協力へのサービス・ショットだったのでしょうか?このシーンは「このお蕎麦やさんどこだろう?」と、実に気になる映し方をしているように感じました。)
そしてこのシーンで、隣の写真館のある白い建物の1階で、壁に張り付いて撮影をじっと見ている白いシャツに半ズボンの少年が確認出来ます。
これは、ひょっとして、あのロケ写真を撮った、のちの「四谷大木戸 藪蕎麦」主人、小林少年の姿でしょうか!? だとしたらすごい。
下の写真は現在の風景。
そして、ゴリさんは小林ビルの屋上へ。
交差点が外苑西通り側、靖国通り寄りに映しだされます。
「おっ!これは!」
と期待しましたが、「トルコ 大木戸」までは通り1本分届かず。しかし、あの一帯は、古い建物、住居が密集しているように見えます。
四谷四丁目ロケはここまで。
ただその後、唐突に女性2人がお蕎麦やさんで食事をするシーンが入ります。これは、ひょっとして「四谷大木戸 藪蕎麦」の店内なのでしょうか?
壁に掛かった丸い額に入った海老が描かれた色紙が、印象に残ります。
ではでは、今回のロケエリアを1982年の地図で確認してみます。
(画像クリックで拡大地図にリンクします)
そんなわけで・・・。
1981年の「太陽にほえろ!」ロケ写真の検証でした。
さすがに、金曜夜8時放送のドラマで「トルコ大木戸」を映像で捉えることはないだろうとは思っていましたが、35年前のあの辺りの雰囲気を目で見て感じることができてとてもわくわくしました。
四谷四丁目をロケ地にした回はその他にもあって、あと今回確認できたのは、第529話「山さんの危険な賭け」(1981年7月17日放送)。
犯人グループ、響組のビル「響興産」として、建物の名前は架空のものになってるけど、住所がはっきり「四谷4丁目24番地」と書いてある。
調べてみたら、一時期毎日ランチで通ってた魚の美味しい料理屋さん「旬香」の入ってるとこじゃない。建物はなんにも変わってないのでは??
最後は、余談でした。
ではでは。
【追記・後日談】
本文中、「もしや!?」と記させていただいた「四谷大木戸 藪蕎麦」前のシーンで、隣の写真館のある白い建物1階で、壁に張り付いて撮影をじっと見ている白いシャツに半ズボンの少年に関して。
後日、四谷四丁目町会 ホームページ委員会 小林辰充様(四谷大木戸 藪蕎麦 ご主人)にお問い合わせさせていただいたところ写りこんでる子供、それはまさしく私ですね(汗) その直後にゴリさんと並んで写真を撮ってもらったんです。
私が写ってるとは、本当にビックリしました。とのお返事! これまた35年経っての大発掘でありました。(2016.7.19.追記)
→続き:【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その12
[追記]
念のため書いておきますが、この文章にポール・マッカートニーに対する悪意などの他意は一切ありませんし、1966年の来日時に「ポールがトルコ風呂に行こうとしてそれがかなわなかった」ということが100%事実である裏付けは私には取れておりません。文中の書籍での記述や、証言者の発言から、それが事実だと想定してのフィールドワークです。また、文中の取材先などの表記や画像の掲載、表現に問題がございましたらご指摘ください。
そして、これは、飽くまで本家「ビートルズ来日学」宮永正隆さんの長年の緻密で執拗なインタビューと検証への最大限の敬意がまずはじめにあっての、そこでちらっと見えた連載や書籍ではやりづらいかもしれない「スキマ」への好奇心が発端の取り組みです。
(わざわざ言うのも無粋ですね)
1件の返信
[…] この写真は、ここやここで検証した1981年に撮影されたドラマ「太陽にほえろ!」(製作・著作:東宝株式会社/制作:日本テレビ)のロケ写真です。 […]