【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その8

(title design/S.Takei)
ウェブ上の玉石混淆の情報を、果たしてどこまで、こういった検証で取り上げて良いものだろうかと、迷うところではあるのですが、今回のお話は、テーマがテーマだけに、このような匿名掲示板にこそ、有力な情報が上がっている可能性は全く否定は出来ないだろうと思い、「参考情報」として取り上げてよいのではと筆を進めてみます。
匿名の調査班S郎氏から
「2chの過去ログに大木戸のことが書いてあるスレッドがある。」
という情報を受けました。
該当URLはこちらですが、直積的な表現や性的画像あるので、閲覧は自己責任でお願いいたします。
スレッド名は「大木戸を語る」。
【スポンサードリンク】
1 :名無しさん@入浴中:02/03/12 12:04
四谷三丁目あたりにあった”大木戸”って今は無いのか?
純和風熟女であったが、もはや想い出か・・・。
の投稿で、2002年3月12日からスタートし、途中から大木戸とは全く関係のない話が続き、74件目の発言が2002年9月3日にされたところで終了となっています。
では、「トルコ大木戸」に関する発言を拾ってみます。
(ただし具体的な、直接的なサービスに関する記述は省きます)
5 :名無しさん@入浴中:02/03/13 12:31
大木戸・・・・。
懐かしい・・・。
ホテル本陣の側だよね。
着物姿が懐かしい・・・。
8 :名無しさん@入浴中:02/03/13 19:21
10年ぐらい前まではね、ナイタイマガジンとかにもたまに載ってたよ。
いつ頃無くなったのかは知らない。
10 :special love:02/03/13 20:57
個室サウナ 大木戸…今はもう無いんだ
夕方行くとタイムサービスで安かった。
個室に入ると赤い壁に赤い絨毯。ベットがあって岩風呂風のお風呂があった…
11 :名無しさん@入浴中:02/03/13 21:07
そう、昔の遊郭、という雰囲気。
入り口は、暖簾かかってなかったっけ?
俺行ったのは、大木戸トルコ時代だけど・・・。
場所は、四谷四丁目近くでは?
15 :名無しさん@入浴中:02/03/19 19:31
確か95年か96年の2月いっぱいで閉店。
つぶれる1週間ほど前に知らずに行ったら
姫から「今月いっぱいなのヨ」と聞かされた記憶がある。
36 :名無しさん@入浴中:02/06/02 18:39
懐かしい店名だな。
そう半地下のお店で小さな部屋が向かい合ってて、
女郎屋を思わせるような淫靡な造りだったね。
37 :名無しさん@入浴中:02/06/02 18:42
遊郭の香りのする所だったね。
52 :名無しさん@入浴中 :02/07/20 13:43
十年くらい前に逝きました。
新宿御苑の大木戸門のそば。
ほぼほぼ、私たちが追いかけて来た「トルコ大木戸」に関する発言とみて間違いないでしょう。
14年前のやり取り。
その数年前に無くなってしまった「トルコ大木戸」(トルコ風呂名称問題以降の店名は現時点では不明)を懐かしむ(おそらく)オジサンたち。
では、キーワードを拾っていってみましょう。
・純和風熟女
・着物姿
・ナイタイマガジンとかにもたまに載ってた
・個室サウナ 大木戸
・個室に入ると赤い壁に赤い絨毯。ベットがあって岩風呂風のお風呂
・昔の遊郭、という雰囲気(遊郭の香りのする所)
・入り口に暖簾が掛かっていた
・確か95年か96年の2月いっぱいで閉店
・半地下のお店で小さな部屋が向かい合ってて、女郎屋を思わせるような淫靡な造り
半地下の入り口の暖簾をくぐると、小さな部屋が向かい合う一室に案内される。
部屋の中には純和風熟女に着物姿の女性が。
赤い壁に赤い絨毯。ベットがあって岩風呂風のお風呂がある・・・お店の構造や雰囲気も具体的に伝わって来ます。
まさに昭和の大人の世界。
「ナイタイマガジンとかにもたまに載ってた」
本件に関しては、1960年代後半から1990年代半ばに掛けての風俗ガイド本、情報誌を「ナイタイマガジン」に限らず追いかけ始めています。
ただ、少なからず「ナイタイマガジン」に何らかの情報が載っている可能性は高そうですね。
で、先日からいくつかその手の方面に強そうな古書店を当たってみているのですが、いわゆる風俗ガイド本、情報誌といったものは、
「時々出てくるんだけれど、売れないかなぁと捨てちゃうことが多いんだよね。」
という答えを複数で聞きました。
以外に難航しそうです。
なんとか、お店の情報、レポート、写真(店内・店外)、地図、広告の載っている雑誌を入手出来ればと考えています。
では、
「個室サウナ 大木戸」
という1984年のトルコ風呂名称問題以降の店名とされる記述、
「確か95年か96年の2月いっぱいで閉店」
という証言に関して検証してみます。
「トルコ大木戸」周辺の1995年から1998年のゼンリン住宅地図をアップします。
1995年版(1994年11月発刊)では、「割烹 自慢荘」とその奥の「大木戸ソープランド」という文字が見えます。

前回ご紹介させていただいた四谷四丁目町会のみなさまからの証言では
「トルコの名称が禁止になってソープランド大木戸? と改名してしばらく営業していた。」
というお話もございました。
果たして「個室サウナ 大木戸」「大木戸ソープランド」「ソープランド大木戸」名称はいずれだったのか?
この点に関しまして、後日松沢呉一さんから
「個室浴場」は法律(風営法)上の区分。もともとはトルコ風呂というくらいで蒸し風呂があったので、「個室サウナ」とも言う。「トルコ風呂」や「ソープランド」は一般的な呼称。クラブ、ラウンジ、キャバクラ等が全部法的には「カフェー」であるようなもの。したがって「どっちか」というより、どっちも使っていたのでは?
という見解をご教示いただきました。
確かに、少ないながらも現時点で入手している古い雑誌でも「トルコ大木戸」ではなく、「大木戸トルコ」単に「大木戸」などと名称の表記はバラバラです。
トルコ(風呂)、個室サウナ、ソープランドであった店「大木戸」の正しい名称の追求は、あまり意味のないことであると判断します。
では地図の検証に戻ります。
1996年版(1995年11月発刊)では、「割烹 自慢荘」「大木戸ソープランド」は建て壊され、新ビル建設に向けて動き始めているように見受けられます。

1997年版(1996年11月発刊)では、旧「割烹 自慢荘」横の駐車場も含め、現在のビルの建設が始まっていることがわかります。この時点では「(仮)」という文字が記載されています。

そしていよいよ1998年版(1997年11月発刊)では、「(仮)」の文字が消え、現在のビルの名称となっています。

さて。
今一度、現在のビルの定礎の文字を振り返りますと、1996年(平成8年)<「平成八年十一月吉日」とあります。
定礎とは・・
「ていそ【定礎】 土台石をすえること。建物の工事を始めること。」
(岩波国語辞典 第四版)
1996年版(1995年11月発刊)の地図で、すでに現在のビルの建設が始まっていることが確認出来るということは、
「確か95年か96年の2月いっぱいで閉店」
の書き込みに関しては、1995年2月末で「大木戸」は閉店した。
と考えるのが自然ではないでしょうか?
さて。
ここで実に面白いなと感じたことが・・・。
インターネットが一般に爆発的に普及し始めたのが1996年と言えるでしょう。
インターネット元年をWindows95が出た1995年とする発言や報道をよく見かけますが、マイクロソフトはインターネットには、当時本気で向き合ってはいたとは言えませんでした。
後に「ブラウザ戦争」みたいなこと言われましたが、私を含め多くの人はIEではなく、「ネットスケープ・ナビゲーター」を使ってました。
また、インプレスが中心になって発表する「インターネット白書」が初めて出たのは1996年4月10日。
95年10月の統計報告によれば、24時間専用線で繋がっている利用者(この場合、サービス提供者を含む)は1,690万人、ダイアルアップIP接続まで含めると2,640万人、メール交換だけできる人まで含めると3,900万人という数字をはじき出している
[P41-42]
これ、全世界での話ですよ。
さて・・・。
今や、こういったアダルト情報や風俗情報は、ウェブを使って入手することが主流なのかもしれません。
1995年2月末に店を閉じ、ウェブ上にはその思い出が語られるサイトのみがかろうじて残っている「大木戸」。
区切られた時代の象徴を見る思いです。
「大木戸」・・・その存在が愛おしく思えて仕方がないのは、私だけでしょうか?
→続き:【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その9
[追記]
念のため書いておきますが、この文章にポール・マッカートニーに対する悪意などの他意は一切ありませんし、1966年の来日時に「ポールがトルコ風呂に行こうとしてそれがかなわなかった」ということが100%事実である裏付けは私には取れておりません。文中の書籍での記述や、証言者の発言から、それが事実だと想定してのフィールドワークです。また、文中の取材先などの表記や画像の掲載、表現に問題がございましたらご指摘ください。
そして、これは、飽くまで本家「ビートルズ来日学」宮永正隆さんの長年の緻密で執拗なインタビューと検証への最大限の敬意がまずはじめにあっての、そこでちらっと見えた連載や書籍ではやりづらいかもしれない「スキマ」への好奇心が発端の取り組みです。
(わざわざ言うのも無粋ですね)
1988年のナイタイマガジンには広告を含め、トルコ大木戸の記述はありませんでした。
貴重な情報をありがとうございます。
承知いたしました。