【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その3
(title design/S.Takei)
さて。
前回までに、ついにポールトルコの場所と名前までを解明することができました。
しかし、人間の欲はとどまることはありません。
次は、この目で画像として見たい。
「トルコ大木戸」の姿を・・とは難しいかもしれないけれど、何とか四谷四丁目交差点から、煙突が写った風景が見れないものか・・・。
訪問の順番は前後するのですが(四谷図書館での収穫は次回で・・・。)、四谷四丁目辺りで古くから営業してそうなお店として、隕石と古美術品店「宇宙村」の店主、もとい村長の景山八郎さんのことが、頭にずっと残っていました。
お店は、四谷四丁目交差点から新宿駅方面に少し進んだ右側にあります。「トルコ大木戸」跡地へは、大木戸下方面に通り2本ほどの距離にあります。
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昔からテレビ番組や雑誌などで登場する店主の強烈なキャラクターが印象に残っていたものの、御年今年79という年齢といい、この地で長く商売を行ってきた方ということで、是非お話をうかがってみたいと思っていたのです。
通行人は「宇宙村」を前にして、ニヤニヤ笑ったり、奇異の表情を向ける人が多数。いや、まぁ、私だって正直この店に入るのは勇気がいりました。
入店前。私は、改めて宇宙村のサイトを確認し、1,000円くらいで買える小さい隕石か、宇宙パワーシールってのがあることを確認し、店内へ。
店主・・・もとい村長の姿は見えない。
しばらく、店内の商品を眺めていると・・・奥から「いらっしゃい。」という声が。
「こんばんは。」
「今日は何探してるの?」
「宇宙パワーシールが欲しくて。」
「あなた初めて来たの?」
「はい。ここはしょっちゅう通ってるんですが、おうかがいさせていただくのは初めてです。」
私は、1枚1,000円の宇宙パワーシールを手に取りました。
「隕石買ってかないの?1000円からあるよ。」
「いや、今日はこれが欲しかったんで・・・。」
「あなた仕事なにしてんの?」
そこで、少し話題を合わせようと思ったので・・・。
「あ、宇宙のカレンダーというか、衛生画像を使ったカレンダーを作ってるんです。」
「え!ならダメだよ、隕石持ってなきゃ。」
とにかく、営業熱心。グイグイきます。
いやいや、ここでなんとか本題の話聞かなきゃ。
「この店はいつからやってるんですか?」
「14〜15年前だよ。その前はもう少しあっち(新宿寄り)で30年くらいやってたよ。」
(【松沢呉一さんコメント】昔は新宿一丁目でしたよね、あの店。[*四谷四丁目の隣町])
「今、この辺のこと調べてまして、この裏にトルコ風呂があったってこと覚えてますか?」
「知らねーよ。そういうの興味ないから。」
「大きな煙突があったの知りませんか?」
「ああ、あったねぇ。真っ黒い煙突が。」
「そこに『トルコ風呂』って大きな文字がかいてあったと聞いたのですが・・・。」
「覚えねてないよ。興味ないし、そういうの行ったことないから。」
「どこかにその辺の写真ってないですかね。」
「誰が何でそんなとこわざわざ撮るのよ。(外苑西通りの)向こうっ側の古い人に聞いてみたらいいじゃない。」
「はい。この間、旅館長良川のご主人にお話を聞いてきたんです。」
ほぼ万事休す。
「どうもありがとうございました。隕石のこと勉強してまた来ます。」
「そうだよ、宇宙のカレンダーやってんだから隕石くらいもってないと。入口に説明書とか4種類あるから持ってきな。」
「ありがとうございました!」
と、チラシをもらって店を後にしました。
トルコ大木戸の煙突が
「真っ黒い煙突だった。」
という発言は、ひとつの収穫でした。
また、写真の存在に関しての問いに、
「誰が何でそんなとこわざわざ撮るのよ。」
というのは、一般的な人々のひとつの反応を表している言葉であったのかもと感じました。
後述する、四谷図書館、新宿歴史博物館の調査でも四谷大木戸交差点(現、四谷四丁目交差点)の画像はいくつか見つかるのだけれど、それは四ッ谷方面から新宿方面を写したものが、または逆からのものがほとんどでした。
トルコ風呂の真っ黒い煙突がある
「あの辺ってそれ以外、ボロボロの家があったくらいで何もなかったんだから。人通りも少なかったし。」(旅館長良川主人・談)
という交差点から外苑西通りを大木戸下方面へ向かった風景を確かにわざわざ撮影はしないのかもしれません。
でも見たいんだよ!
→続き:【裏ビートルズ来日学】ポールとソープと新宿風俗史 その4
[追記]
念のため書いておきますが、この文章にポール・マッカートニーに対する悪意などの他意は一切ありませんし、1966年の来日時に「ポールがトルコ風呂に行こうとしてそれがかなわなかった」ということが100%事実である裏付けは私には取れておりません。文中の書籍での記述や、証言者の発言から、それが事実だと想定してのフィールドワークです。また、文中の取材先などの表記や画像の掲載、表現に問題がございましたらご指摘ください。
そして、これは、飽くまで本家「ビートルズ来日学」宮永正隆さんの長年の緻密で執拗なインタビューと検証への最大限の敬意がまずはじめにあっての、そこでちらっと見えた連載や書籍ではやりづらいかもしれない「スキマ」への好奇心が発端の取り組みです。
(わざわざ言うのも無粋ですね)