読後雑記:増井修「ロッキング・オン天国」
増井修「ロッキング・オン天国」(イースト・プレス)読了。
今や洋楽リーディング誌にして、派生音楽誌多数の出版事業を中心に、フェスになんだのイベント主催まで多角経営でぶいぶい言わせてる同社でありますが、私が「ロッキング・オン」をちょこちょこと買い始めたのは私が東北の片田舎の高校生だった80年代半ば。
表紙には中身を表したコピーライトなどひとつなく、表紙に載ったアーティストが誌面で全く触れられてないなんてこともホントにあった(それが意図的であったことも本書で触れられています)。
妙に熱量の高い難解な文章が多くて、全て読むのにはホントパワーが必要だった。他誌ではなかなか情報が得られなかった西新宿のブート屋の広告を見ることの方が実は楽しみだった気がします。当時はスミスもエコバニもよくわからなかったのです。
そんなムードが変わったのが、1989年のある時期。
毎号毎号「ストーン・ローゼズ」という名の、当時大人気だった「ガンズ・アンド・ローゼズ」のパクリか?パロディか?と思うようなバンドがプッシュされるようになりました。
「何かマンチェスターですごいことが起きてる!」
毎号「ロッキング・オン」のローゼズに関する記事をむさぼるように読み、地元のCD屋で数週間掛けてやっと1stを手に入れて、中毒のように何度も何度も繰り返し聴いたものです。
これが全て、「ロッキング・オン」の増井を中心とした煽りで、大いに我々は乗せられてしまったわけですが・・・何というか当時は、それが実に気持ちよく「ロッキング・オン」に煽られ乗せられ、でもそれが決してウソではない。
半ば新興宗教的でもあり、「ロッキング・オン」というメディアに対する発信者と受け手の奇跡的な信頼感があったような気がするのです。
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事実、他の音楽誌でローゼスを始めとしたマンチェスター・ムーブメントを取り上げる記事を見たことはほとんどなかったのを覚えています。これを「ロッキング・オン」主導の煽りであったとは受け止めず、「他誌では、捉えることの出来ないバンドの素晴らしさを我々は享受しているのだ」と選民意識すらおぼえていたことは、まさに新興宗教的。
でもまぁ、そのくらいの熱量にヤラれていたものであります。
その後、マンチェシーンに、ライド、マイブラ、ダイナソーなどを核としながら、その他毎号「ニューカマー!」とフューチャーされるバンドにほとんどハズレがなかった(ように感じていたのは)のは、当時の私の感性の鋭さだったのか、「ロッキング・オン」教の素晴らしさだったのか。
そんな「ロッキング・オン」との蜜月は1992年くらいまで続いたでしょうか?
以降毎月買ってはいたけれど、半ば惰性になってしまったような気がします。
ニルバーナ、オアシス、ブラー大活躍の頃は結構冷めてしまっていたかも。
そんなわけで、本書は「ロッキング・オン」二代目編集長の増井修氏による、入社から雑誌の世の中の勢いと読者とともにグイグイ発展して行く様のドキュメンタリーであります。
あの頃のロキノンの熱量とワクワク感を味わった方は必読ではないでしょうか。もちろんそれがローゼズの時期ではなく、オアシスやブラーだった方にも。