「風街レジェンド2015」雑感
8月22日、松本隆 作詞活動45周年記念オフィシャル・プロジェクト「風街レジェンド2015」@東京国際フォーラムの2日目。
なんとも贅沢で芳醇な時を過ごさせていただきました。
松本隆は冒頭3曲、ラスト2曲ではっぴいえんどのドラマーとしてステージに上がるのみで、あとステージにあるのは、このイベントの主役が45年の間に紡ぎ出した言葉とそれを彩る音楽と歌という趣向。
約4時間に及ぶコンサートの演奏は、井上鑑をバンマスに松原正樹(G)、今剛(G)、吉川忠英(G)、高水健司(B)、林立夫(Dr)、山木秀夫(Dr)ら強者たちがバックを固めるのです。
めくるめく松本隆歌絵巻のセットリストは下記でありました。
■セットリスト(左から曲目、公演アーティスト、オリジナル)
*2日目のみ
01.夏なんです(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、はっぴいえんど
02.花いちもんめ(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、はっぴいえんど
03.はいからはくち(松本隆、細野晴臣、鈴木茂、佐野元春)、はっぴいえんど
04.木綿のハンカチーフ(太田裕美)
05.てぃーんずぶるーす(原田真二)
06.タイム・トラベル(原田真二)
07.シンプル・ラブ(大橋純子)
08.ペイパームーン(大橋純子)
09.三枚の写真(石川ひとみ)、三木聖子
10.東京ららばい(中川翔子)、中原理恵
11.セクシャルバイオレットNO.1(美勇士)、桑名正博
12.ハイスクールララバイ(イモ欽トリオ)
13.赤道小町ドキッ(山下久美子)
14.誘惑光線・クラッ!(早見優)
15.風の谷のナウシカ(安田成美)*
16.「菩提樹」(鈴木准、河野紘子)、フランツ・シューベルト
17.「辻音楽師」(鈴木准、河野紘子)、フランツ・シューベルト
18.君は天然色(伊藤銀次、杉真理)、大滝詠一
19.A面で恋をして(伊藤銀次、杉真理、佐野元春)、NAIAGARA TRIANGLE vol.2
20.バチェラー・ガール(稲垣潤一)
21.恋するカレン(稲垣潤一)、大滝詠一
22.スローなブギにしてくれ(I want you)(南佳孝)
23.ソバカスのある少女(鈴木茂、南佳孝)
24.砂の女(鈴木茂)
25.しらけちまうぜ(小坂忠)
26.流星都市(小坂忠)*
27.Woman“Wの悲劇”より(吉田美奈子)、薬師丸ひろ子
28.ガラスの林檎(吉田美奈子)、松田聖子
29.バンド紹介:スピーチバルーン〜カナリア諸島にて(風街ばんど)
30.綺麗ア・ラ・モード(中川翔子)
31.卒業(斉藤由貴)
32.September(EPO)、竹内まりや
33.さらばシベリア鉄道(太田裕美)
34.やさしさ紙芝居(水谷豊)*
35.ルビーの指環(寺尾聰)
EN.1.驟雨の街(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)
EN.2.風をあつめて(松本隆、細野晴臣、鈴木茂+全員)、はっぴいえんど
なんてってたって、冒頭のはっぴいえんど(3/4)の興奮度と云ったらなかったです。その時は、あの3人が、今、はっぴいえんどの曲を奏でているという事実にゾクゾクする感激を覚えていたのですが、全体を通じて振り返れば、あのミニマムな演奏は、これからはじまる、彩り豊かな、蜘蛛の糸のように広がる松本隆の世界の原点をまず確認する、儀式のようであったと思うのです。
「まずはここから始まった」のだと。
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「夏なんです」で細野さんが、「花いちもんめ」で茂さんが歌い、「誰かひとりいないよね」と、誰かさんの代役に呼ばれたのが佐野元春で、はっぴいえんどをバックに「はいからはくち」を。
あの今や大御所で、でーんと構えたイメージの元春さんが、はしゃいだような様子で、オリジナルに則った「かんそー」とか「そろ!」とかの合いの手も交えてるのが、今夜の特別さの意味を実感させました。
はっぴいえんどが下がっての前半戦は、まず太田裕美の「木綿のハンカチーフ」でぐっと来て、イモ欽トリオに笑い、山下久美子の変わらぬ可愛らしいフォルムにグッと来て(まさに女性ロックボーカリストの原点!)、この2曲の細野さん作曲のテクノサウンドになるほどと納得。早見優の堂々たるアイドルっぷり、緊張状態でナウシカを歌う安田成美の可愛さといったらありませんでした。
そして中盤、海やリゾートの画像が投影され、そして大きく「ロング・バケーション」のジャケットが!
待ってましたのナイアガラモードへの突入であります。
センターにマイクが3つ並べられ、「君は天然色」のイントロで幕が上がります。ステージで歌うは伊藤銀次と杉真理。そして井上鑑率いる「風街バンド」はライブでナイアガラサウンドをぶつけて来るのです。
いやぁ至福の瞬間。
しかし、ひとつ空いたマイクにはいやがおうにも「あの人」の不在が浮き彫りになるのです。
MCは伊藤銀次と杉真理が語る大滝との出会い。
でも、例え大滝さんが存命だったとしても、このイベントには参加しなかっただろうなぁ・・・いや、大滝さんが不在となったからこそ、大滝さんを永遠のものにする意味でもこの「風街レジェンド」があったはずだと、何とも複雑にこんがらがった思いにかられました。
そして・・・ひとつ空いたマイクに呼ばれたのは、佐野元春!
「ナイアガラ・トライアングル」のvol.1とvol.2が入り混じっての「A面で恋をして」。
あの「君に逢ったら Babyーー!」「夜明けまでドライ、ブーーー!」のくだりをちゃんと再現しようとしてて、佐野元春のこのイベントに臨む無邪気っぷりがここでも印象に残りました。
そして少し、転換があって茂さん、ティンパンタイムに突入。
生で聴いた「砂の女」に昇天、続いて登場の小坂忠「しらけちまうぜ」で納得。
いやー、しかし、今、僕はいつのどこにいるんだろう。
続く吉田美奈子は、一瞬「これは懐古イベント」と思いそうになるこちらの思惑をぶち壊してくれる異才ぶりにヤられました。
大好きな「Woman“Wの悲劇”より」を歌い上げ、続く今回のイベントのもうひとつの大きな不在でもある松田聖子の「ガラスの林檎」をフリージャズスタイルでアレンジぶち壊しのとんでもない存在感を見せつけられました。
いやぁ、ここもまたハイライトでありました。
「卒業」を歌う斉藤由貴の堂々たる女優オーラのすごかったこと。
改めて誰かさんの不在を思わせる太田裕美の「さらばシベリア鉄道」の歌いっぷりも感激。
そして大円団は、またはっぴいえんど(3/4)を中心にした、「驟雨の街」。そして出演者全員を改めてステージに招いての「風をあつめて」。
約4時間の松本隆ショー。
嗚呼、良いもの観ました。
至福大満足の時を過ごさせていただきました。
今年の夏が終わった気がします。