浜遁対談:祭りだ、祭りだ、「SMiLE」祭りの始まりだ!
浜尾六郎——いやぁ、しかしびっくりしたよ。「SMiLE」の発売日だっていう11月16日にアマゾンからから「SMiLE」 Boxの入荷遅延の連絡メールが届いて 、「現在のところ2012年1月上旬頃の入荷を予定しております」なんて書いてあるじゃないか。ら、ら、来年かよ!?ってひっくり返るかと思ったよ。
仇遁——でも2枚組の「デラックスエディション」はちゃんと店頭に並んでましたよ。
浜尾六郎——そうなんだよ。だからその日、慌ててCD屋に買いに行ってさ。で、何だか「すぐに無くなっちゃうんじゃないか」って気持ちになって急ぎ足でCDつかみ取ってレジに駆け込んじゃったよ。
仇遁——オイルショックの時のトイレットペーパー騒動じゃないんですから・・・。5枚組のBOXはちゃんと出たんですかねぇ。
浜尾六郎——で、そのあとアマゾンもう一度検索したら、別な店で普通に「通常配送」で輸入盤を扱ってたから注文し直したよ。日本盤は品薄で価格がとんでもないことになってるな。
仇遁——まぁ、なんだかんだありながら祭りが始まったと。
浜尾六郎——しかし、CD店に当たり前にあのジャケが並んでるの見たら「あれ?ここはどこ?西新宿?このCDの音質はどうなの?」って軽いめまいがしたな。
仇遁——大げさです。
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浜尾六郎——・・・・本題に入ろう。
改めて思うけれど、今回のプロジェクトって、1967年に製作が途中見送りとなったアルバムが2004年に新たにレコーディングして完成され、それをお手本にこの2011年に、1966~67年のレコーディング音源からアルバムを構成しようってお話なわけだよ。ホントこの40数年の「SMiLE」の物語ってのはすごいよな。
仇遁——絵画の世界でも彫刻の世界でもこんな話ないでしょうね。
浜尾六郎——これまでオフィシャルで小出しにされたり、山のようなブートで耳にして来た音源群が、当然最高の音質に化粧直しされて「然るべき場所」に収められて、そして耳に入ってくる興奮と言ったらないね。
仇遁——ホントよく出来てますよね。
浜尾六郎——2004年のブライアン版「SMiLE」が出た時にも思ったけれど、それまで耳にしていた「SMiLE」音源群は、あくまで楽曲のパーツ、パズルのピースを並べられたものに過ぎないわけで。
仇遁——はい。
浜尾六郎——どうしても「SMiLE」音源群には、陰鬱だったり、暗い物語がついて回って、重苦しいイメージがあったというのが正直なところなんだけど、ブライアンやヴァン・ダイクらの適切な解釈がなされて、2004年に「SMiLE」として世に出されたものは、ホントに明るくて才気にあふれた「ポップアルバム」以外の何ものでもなかった。その事実に大きな感動をおぼえたわけで。
仇遁——そしてそれが、今回は1966〜67年のビーチ・ボーイズの「SMiLE」音源で構築されたわけです。
浜尾六郎——「Look」「Holiday」など2004年に新たに歌詞やメロデイが追加された楽曲もあるから、もちろん1966〜67年のセッション音源だけでパズルのピースが全て揃っている訳ではないんだ。2004年のブライアン版「SMiLE」を完成形とするなら・・・事実そうなのだけれど、飽くまでこのビーチ・ボーイズ版「SMiLE」は未完成なんだよ。
仇遁——だからタイトルが「SMiLE」ではなくて「SMiLE Sessions」なのでしょうね。
浜尾六郎——しかし、ここにはキャロル・ケイやハル・ブレイン、トミー・モーガンらブライアンお気に入りのセッションミュージシャンの演奏と、カール、デニス、マイク、アル、ブルース、そしてブライアンの声がある、ハーモニーがある。そしてその音源で正解に極めて近い「SMiLE」が構築されている。で、この完成度、ホントすごいことだよ。
仇遁——「未完成」と言ったり、「すごい完成度」と言ったり、なんだかよくわかりませんが。
とにかく。CDのライナーのブライアンの寄稿で、自身このプロジェクトを2004年ブライアン版SMiLEの先にあるものとして極めて前向きに位置付けていることもうれしいですよね。
浜尾六郎——このブライアンの文章が、また良いいんだなぁ。何度も読み返してはウルウルしちゃうよ。
ブライアンがなぜSMiLEを作ろうと思ったか、どんな思いで作っていたか、どんな思いでやめにしたのか、どんな経緯で、長年封印していたのに、少しずつ「これは聴かれるべき音楽だ」と思えるようになったか、自分の言葉で語っているんだな。
仇遁——そろそろ終わりにしませんか?まだ「SMiLE」本編にしか触れてませんが、今回のもうひとつの目玉は、膨大な「SMiLE Sessions」音源ですよね。
浜尾六郎——また「SMiLE」素材の奥深き沼に入り込もうって話なんだけど、ちとこれもすごすぎやしないいか?「SMiLE」音源群はそれなりに聴いて来た自負はあるんだけど、「うわっ、なんだこれ?」「こんなんあったんだ!?」と油断も隙もありゃしない。ホント聴き進めるのがもったいないよ。
仇遁——こちらはまたの機会にするとして。ところで今月の「レコード・コレクターズ」の「SMiLE」 特集の萩原健太さんの文章読まれました?
浜尾六郎——「飽くまで推測」としてだけど、今回のプロジェクトで、マイクやアルが足りないボーカルトラックを新たにレコーディングしようとしていたのでは、ということを書いていたのは読んでててゾッとしたよ。
仇遁——でも、なんともさもありなんという感じで。
浜尾六郎——厚顔無恥もここまで来ると怪談だよ。でも来年あたり「これがホントのビーチ・ボーイズ版「SMiLE」だ!」とか言って出して来たら笑うよな。
仇遁——当然スタッフやブライアンが却下するでしょうけど。
浜尾六郎——いや、ビーチ・ボーイズだけは何が起こってもおかしくないぜ?