「タネも仕掛けもございません」読みはじめ
この土日で大きな書店で買いに行こうと思っていた「タネも仕掛けもございません~昭和の奇術師たち~」 (著:藤山新太郎 / 角川選書)が、金曜の夜帰宅するとポストに。角川学芸出版からお送りいただきました。しかも藤山新太郎先生の直筆のお手紙付き!感激です。
アダチ龍光さんの章はゲラ段階で 拝見をしておりましたが、こうして1冊の本としてまとまると、まったく味わいが違って来るのが不思議。
ゲラ段階では掲載がなかった写真には、昭和29年頃撮影された私の祖母(龍光の腹違いの妹)宅での集合写真が掲載。こちらは、2006年に日本奇術協会創立70周年記念誌「七十年の歩み」刊行時に提供させていただいたもの。
この写真は私も大好きです。
そんな訳で、わくわくしながら冒頭の「はじめに」そして第1章「地獄極楽の狭間を生きたイリュージョニスト、引田天功」を読んでいるところです。
続く第2章では伊藤一葉、第3章でアダチ龍光、第4章で島田晴夫と計4人の昭和の奇術師に焦点を当て、最終章では昭和の奇術師(史)を戦前の松旭斎天勝らの大一座での奇術、寄席演芸での奇術の系譜、古典奇術「手妻」を現代に伝える流れ、そしてナポレオンズ、マギー司郎、Mr.マリックなどテレビで活躍する奇術師まで総括しています。
個人的に一番楽しみだったのが、第1章の引田天功(初代)の光と影、虚と実。
小さな頃「木曜スペシャル」での大脱出シリーズを手に汗握りながら見ていたし、天功監修の小学館入門百科シリーズ「手品・奇術入門」は何度読んだかわかりません。(lilliputさんのサイトに書影あり。私が持っていたのは、第2版19刷の方。第2版32刷以降の初代没後は2代目が引き継いでるんだ、へぇ。)
あの涼しい笑顔。引田天功はホントかっこ良かった。大好きでした。
でも、何かモヤモヤっと実体がつかめないイメージが強かった。そして亡くなってしまった・・・・あれから30数年経って、それが何であったかが、はっきりわかった気がします。
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奇術の確かな腕もある。
あの涼しい笑顔、スマートな天性の魅力もある。
一級のスターになりながらも、常に追随する後輩の存在や、映画スター、テレビスターに張り合うよう、自分を大きく大きく見せようとしていた。それが時に輝いて映ることもある、時に空回りをしていた。そしてだんだんと空回ることが多くなり。。。でもこういう生き方もかっこいいかもと思えてしまいます。すごい人間くさい。
(ギャラ2億円で連日出演した大阪万博の下りはちょっとすごい。これを読んでからこのスライドショー動画「EXPO’70 電力館」の0:40~1:15あたりのスナップ写真を見ると、この天功の自信にあふれた表情にいたたまれない気持ちになってしまいます。)
引き続き読み進めて、自分なりに書き残したいと思います。
藤山氏の文章は昭和の奇術師の人、芸を語りながら、途中そのルーツとなる世界のマジシャンや映画、天一、天勝、そして手妻へと話が膨らんで行くのがまた快感なのです。
これは名著であります。
【関連コーナー】
アダチ龍光さんのこと